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オススメは?ジェフ・ベックの名盤TOP5と初心者向けベストアルバム

「名盤TOP5・ベスト盤 Jeff Beck 初心者必聴」と記載したアイキャッチ

1965年、ヤードバーズに加入した一人のギタリストが、ロックギターの歴史を塗り替え始めました。ジェフ・ベックは、エリック・クラプトン、ジミー・ペイジと並ぶ「ヤードバーズの三大ギタリスト」の一人でありながら、最も実験的で、最も予測不可能な道を歩んだ音楽家です。ブルースロックから始まり、ジャズフュージョン、テクノ、エレクトロニカまで。その58年におよぶキャリアは、まるでギター表現の可能性そのものを探求する旅でした。

グラミー賞8回受賞、ロックの殿堂2回殿堂入り。しかし数字では測れない彼の真の偉大さは、「ギターを歌わせる」という唯一無二の才能にあります。ピックを使わず指で弦を操る独特の奏法、トレモロアームを駆使した表情豊かなビブラート、そしてフィードバックやディストーションを楽器として扱う革新性——ジェフ・ベックのギターは、言葉を超えた感情の言語となったのです。

ロック、ジャズ、ファンク、エレクトロニカの境界を軽々と越えながら、常に「今」の音楽を追求し続けた彼。2023年1月10日、78歳でこの世を去りましたが、その遺産は永遠に色褪せることはありません。今回は、そんなギターの魔術師が残した宝石のようなアルバムたちをご紹介します。

ジェフ・ベックの名盤TOP5

Truth - ハードロック誕生を告げた歴史的デビュー作

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ワーナーミュージックジャパン

1968年発売のデビューアルバムは、ギターハードロックというジャンルそのものを創造した革命的作品です。ヤードバーズ脱退後に結成したジェフ・ベック・グループの第一作で、ロッド・スチュワート(ボーカル)、ロン・ウッド(ベース)という後の大スターたちとの共演も話題となりました。

「Shapes of Things」では攻撃的なディストーションとフィードバックを武器に、サイケデリックロックの新境地を開拓。「Beck's Bolero」ではジミー・ペイジ、キース・ムーン、ジョン・ポール・ジョーンズとの豪華セッションを実現し、後のレッド・ツェッペリン誕生を予感させる重厚なサウンドを構築しました。ウィリー・ディクソンの「You Shook Me」では、ブルースに革新的なロックアプローチを持ち込んでいます。

Billboard 200で15位を記録し、英国では4位にランクイン。ローリング・ストーン誌の「史上最も偉大なギターアルバム500選」に選出され、「ハードロックの原型を確立した」と評価されています。レッド・ツェッペリン、ディープ・パープルなど、後のハードロックバンドすべてがこのアルバムの影響下にあると言っても過言ではありません。

Blow by Blow - インストゥルメンタルの新次元を切り開いた名盤中の名盤

1975年発売のソロアルバムは、ジェフ・ベックがロックからジャズフュージョンへと大胆に舵を切った歴史的転換点。プロデューサーにジョージ・マーティン(ビートルズ)を迎え、ギターインストゥルメンタルの新次元を開きました。

「Freeway Jam」では疾走感あふれるファンクジャズで聴衆を圧倒し、スティーヴィー・ワンダーの「Cause We've Ended as Lovers」では、ギター一本で人間の声以上の感情表現を実現。ベックのトレモロアームを駆使した「泣き」のフレーズは、ギター表現の教科書となりました。「Scatterbrain」ではテクニカルな速弾きとメロディアスなフレーズを見事に融合させています。

Billboard 200で4位という、インストゥルメンタルアルバムとしては異例の商業的成功を収め、プラチナ認定を獲得。グラミー賞にノミネートされ、ダウンビート誌のジャズ批評家投票で年間最優秀アルバムに選出されました。音楽評論家からは「ロックギタリストがジャズの語法を完全に習得した画期的作品」と絶賛されています。

Wired - フュージョンの極致を示した野心的傑作

1976年発売の続編アルバムは、前作「Blow by Blow」の成功を受け、さらに実験的な方向へと進化した意欲作。ジャン=リュック・ポンティ(ヴァイオリン)、ナラダ・マイケル・ウォルデン(ドラムス)など一流ジャズミュージシャンとの共演が実現し、フュージョンサウンドの完成形を提示しました。

タイトル曲「Led Boots」では、まるで電気が走るような鋭利なギターフレーズでフュージョンロックの新境地を開拓。チャールズ・ミンガスの「Goodbye Pork Pie Hat」では、ジャズスタンダードをベック流に再解釈し、原曲を超える感動的な演奏を披露しています。「Blue Wind」ではポンティとの対話が火花を散らす、スリリングな展開が魅力と盛りだくさん!

Billboard 200で16位を記録し、イギリスでは前作を上回る評価を獲得。グラミー賞最優秀ロック・インストゥルメンタル・パフォーマンス賞にノミネート。ギターマガジン誌は「テクニックと音楽性が完璧に調和した奇跡のアルバム」と評しました。

Guitar Shop - 現代的サウンドで復活を遂げた80年代の最高傑作

1989年発売のアルバムは、80年代後半の沈黙を破り、デジタル技術を取り入れた革新的サウンドで華々しく復帰した記念碑的作品。キーボーディストのトニー・ハイマス、ドラマーのテリー・ボジオとのトリオ編成で、シンセサイザーとギターの融合による新時代のサウンドを構築しました。

「Big Block」では打ち込みビートとベックのギターが絶妙に絡み合い、テクノロックの先駆的サウンドを確立。「Where Were You」は、トレモロアームを駆使した泣きのギターソロが圧巻の名曲で、多くのギタリストが「最も感動的なギターソロ」に挙げる伝説の一曲となっています。「Sling Shot」ではファンクとロックの境界を消し去る革新的アプローチを見せました。

グラミー賞最優秀ロック・インストゥルメンタル・パフォーマンス賞を受賞し、キャリアの中でも最も高い評価を獲得。ギタープレイヤー誌は「デジタル時代におけるギター表現の可能性を示した」と絶賛し、ベックの適応力の高さを証明する作品となりました。

Emotion & Commotion - 円熟の境地を示した晩年の最高到達点

2010年発売のアルバムは、当時66歳のベックが到達した芸術的完成形。プロデューサーにトレヴァー・ホーンを迎え、オーケストラとの共演も実現した、壮大なスケールの作品です。ロック、ジャズ、クラシック、エレクトロニカのすべてが融合した、まさに集大成といえる内容となっています。

「Emotion & Commotion」では64ピースのオーケストラとの共演により、ギターに新たな表現領域を与えました。プッチーニの「誰も寝てはならぬ(Nessun Dorma)」では、オペラアリアをギター一本で歌い上げる離れ業を披露。「Hammerhead」では一転してヘヴィなロックサウンドを聴かせ、年齢を感じさせない圧倒的な演奏技術を見せつけています。ジョス・ストーンをフィーチャーした「I Put a Spell on You」も名演として高く評価されています。

グラミー賞最優秀ポップ・インストゥルメンタル・アルバム賞と最優秀ロック・インストゥルメンタル・パフォーマンス賞の2部門を受賞。Billboard 200で13位を記録し、インストゥルメンタルアルバムとしては異例のヒットとなりました。ローリング・ストーン誌は「ギターの詩人が到達した芸術の頂点」と評価しています。

初心者向けベストアルバム

Beckology - 全キャリアを網羅する決定版ボックスセット

1991年発売の3枚組セット。ヤードバーズ時代から1991年までの約25年間のキャリアを網羅した、最も包括的なコンピレーション作品です。

ヤードバーズの「Heart Full of Soul」から、ジェフ・ベック・グループ、ベック・ボガート&アピス時代の名曲、そしてソロキャリアの傑作まで、時系列に沿って収録。特にレアトラックや未発表音源も多数含まれており、ファンにとっても貴重な内容となっています。「Superstition」(スティーヴィー・ワンダーとの共演)、「People Get Ready」(ロッド・スチュワートとの共演)など、貴重なコラボレーション音源も楽しめます。

音楽評論家からは「ジェフ・ベックの音楽的進化を完璧に追体験できる教科書」として評価され、初心者がベックの全体像を掴むには最適の入門編です。

ザ・ベスト・オブ・ジェフ・ベック - 黄金期を凝縮したベスト盤

2025年発売!黄金期の代表作を集めた2枚組(31曲収録)のベストアルバム。初心者が最初に手に取るべき、最もアクセスしやすいコンピレーションです。

「スキャッターブレイン」「哀しみの恋人達」といったヒットナンバーから、ライブバージョンの名演まで、ベックの多様な魅力をコンパクトに収録。2枚で彼の音楽性の幅広さを体験でき、どの時期のオリジナルアルバムに進むべきかの指針となります。

発売以来、Amazon Music、Spotifyでのレビューでは「ベック入門に最適」との評価が多数寄せられ、新規ファン獲得に大きく貢献している作品です。

おすすめライブアルバム

Live at Ronnie Scott's - 伝説のジャズクラブでの白熱ライブ

2008年発売のライブ映像作品。ロンドンの名門ジャズクラブ、ロニー・スコッツでの2007年の連続公演を収録した、ベック晩年期の最高傑作ライブです。

エリック・クラプトンがゲスト参加した「Little Brown Bird」では、二人の巨匠による夢の共演が実現。「A Day in the Life」(ビートルズ)では、オリジナルを超える感動的なギターアレンジを披露しています。「Big Block」「Blue Wind」など往年の名曲も、円熟味を増した演奏で聴衆を魅了しました。

グラミー賞最優秀ロック・インストゥルメンタル・パフォーマンス賞を受賞。ギターワールド誌は「生涯最高のライブパフォーマンス」と絶賛し、指使いがハッキリわかる映像も含めて多くのギタリストに影響を与えています。

ライヴ・ベック! (Jeff Beck Live at BB King Blues Club) - 名門クラブで捉えた生々しい躍動感

2003年発売のライブアルバム。ニューヨークの伝説的ブルースクラブ、B.B.キング・ブルース・クラブ&グリルでの2001年の公演を収録した、親密な空間での白熱パフォーマンスが楽しめる作品です。

小規模な会場ならではの臨場感と、観客との一体感が存分に味わえるのが最大の魅力。「Brush with the Blues」「Nadia」といった当時の新曲も披露され、スタジオ版とは異なる即興性あふれるアレンジが堪能できます。

録音品質も優れており、ベックのニュアンス豊かなタッチやトーンの変化まで鮮明に捉えられています。

「スタジオアルバムでは聴けない、生々しいベックのギター表現が堪能できる」貴重な作品として、ライブアルバム入門編としても最適な一枚となっています。

初心者向けジェフ・ベック入門

ジェフ・ベックの魅力とは?

ジェフ・ベックの最大の魅力は、「ギターで歌う」という比類なき表現力にあります。多くのギタリストが高速な技巧や複雑なフレーズで聴衆を圧倒する中、ベックはたった一音で人の心を震わせる力を持っていました。トレモロアームを駆使したビブラート、音量ノブを指で操作するボリューム奏法、そして指弾きによる繊細なタッチ——彼のギターは、言葉を超えた感情の言語そのものだったのです。

また、ジャンルの壁を超越する冒険心も彼ならではの魅力です。ブルースロックで名を馳せながら、ジャズフュージョンに転向し、さらにテクノやエレクトロニカまで取り込む柔軟性。常に「今」の音楽を追求し続けた姿勢は、78歳で亡くなるまで衰えることがありませんでした。

さらに、決して前面に出ず、音楽そのもので語る職人気質も多くのミュージシャンから尊敬される理由です。派手なパフォーマンスや自己主張よりも、純粋に「良い音楽」を追求し続けた姿勢は、真の芸術家の証といえるでしょう。

ジェフ・ベックのアルバムの選び方

ベックのアルバムを選ぶ際は、聴きたいジャンルや時代を明確にすることをお勧めします。

  • ハードロックの原点を体験したいなら → 「Truth」
  • ギターインストの最高峰を味わいたいなら → 「Blow by Blow」
  • ジャズフュージョンの傑作に触れたいなら → 「Wired」
  • モダンなサウンドを楽しみたいなら → 「Guitar Shop」
  • 円熟した芸術性を感じたいなら → 「Emotion & Commotion」

初心者の方には、まず「ザ・ベスト・オブ・ジェフ・ベック」で全体像を把握し、興味を持った時期のオリジナルアルバムに進むのが効果的です。特に「Blow by Blow」は、ベックの魅力が最も凝縮された入門編として最適でしょう。

ジェフ・ベックのアルバム売上とその影響

ベックの商業的成功は、同時代のギタリストと比べると控えめかもしれません。しかし、その音楽的影響力は計り知れないものがあります。エディ・ヴァン・ヘイレン、スティーヴ・ヴァイ、ジョー・サトリアーニといった80年代以降のギターヒーローたちは、皆ベックから決定的な影響を受けています。

特に「Blow by Blow」は、インストゥルメンタルアルバムとしては異例のプラチナ認定を獲得し、後のフュージョンギタリストたちに「歌詞がなくても聴衆を感動させられる」という可能性を示しました。ラリー・カールトン、アル・ディメオラ、パット・メセニーなど、フュージョン黄金期のギタリストたちは皆、ベックの開拓した道を歩んでいます。

また、トレモロアームやフィードバックを「楽器」として扱う革新的アプローチは、現代のあらゆるジャンルのギタリストに影響を与えました。メタル、プログレッシブロック、ジャズフュージョン、さらにはエレクトロニカまで——ベックが示した「ギターの可能性」は、ジャンルを超えて継承され続けています。

さらに、常に進化し続ける姿勢は、多くのミュージシャンに「年齢は創造性の障壁ではない」というメッセージを送りました。60代、70代になっても新しい音楽に挑戦し続けたベックは、音楽家としての理想的な生き方を体現していたのです。

まとめ:初心者がジェフ・ベック聴くなら、この名盤とベスト盤から!

ジェフ・ベックの音楽は、ギター表現の百科事典そのものです。その多様性と革新性は、どこから聴き始めるべきか迷わせるかもしれませんが、それこそが彼の音楽の豊かさの証でもあります。

入門編としては、「ザ・ベスト・オブ・ジェフ・ベック」か「Beckology」から始めることをお勧めします。前者はシンプルに要点を押さえ、後者は時間をかけて全体像を理解できます。あなたの時間と興味に合わせて選んでください。

特に注目すべきは、「Blow by Blow」と「Emotion & Commotion」の2枚。前者ではベックのギター表現の核心を、後者では円熟した芸術家の到達点を感じることができます。この2枚を聴けば、なぜベックが「ギタリストのギタリスト」と呼ばれるのかが理解できるでしょう。

そして、時には原点である「Truth」に立ち返って、若き日のエネルギーと革新性を再発見することも、きっと刺激的な体験となるはずです。

最後に、ベックの音楽には「進化」というキーワードが常に付きまといます。彼は決して過去の成功に安住せず、常に新しい表現を追求し続けました。そんな彼の姿勢から、私たちは音楽だけでなく、人生そのものについて多くを学べるはずです。

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