1969年12月6日、カリフォルニアのアルタモント・スピードウェイ。無料野外コンサートで『Under My Thumb』を演奏中、観客の1人が刺殺される事件が起きました。
これが「アルタモント・コンサート」として音楽史に暗い影を落とすことになります。しかし、この悲劇的な出来事すらもバンドの伝説となり、「デビルズ・ロックバンド」という異名を生むことに!
結成から60年以上、スキャンダラスでありながら常に最高峰の音楽性を追求し続けてきたThe Rolling Stones。"世界最強のロックバンド"と呼ばれるローリング・ストーンズの膨大な作品群から、初心者が最初に聴くべき名盤とベストアルバムを厳選してご紹介します。
ローリング・ストーンズの名盤TOP3
Exile on Main St. - 南仏で生まれた、最高傑作
フランスの避税生活から生まれたストーンズの最高傑作。ニースの別荘ヴィラ・ネルコットの地下室をスタジオに改造し、昼夜を問わない録音セッションから紡ぎ出された魂のサウンド。ブルース、ゴスペル、カントリー、ロックンロールが溶け合う18曲は、まさにルーツ・ミュージックの集大成といえます。
「Tumbling Dice」はラスベガスの賭博師を歌った艶やかなロッカー。「Happy」ではキース・リチャーズが珍しくリードボーカルを担当。「Shine a Light」では教会のゴスペルコーラスが度肝を抜きます!
当時の批評家からは「混沌としている」との声もありましたが、時を経て「最高の名盤」としての評価が確立。2003年には『Rolling Stone』誌の「史上最も偉大な500枚のアルバム」で7位にランクインしています。
Sticky Fingers - 物議を醸した70年代の傑作
アンディ・ウォーホールがデザインした実際に開くジッパー付きジャケットで話題を呼んだ本作。しかし、その斬新なアートワーク以上に、収録された楽曲の質の高さに世界は驚愕しました。
新加入のミック・テイラーのしなやかなギターが冴える「Can't You Hear Me Knocking」、カントリー・テイストの名バラード「Wild Horses」、アルバムを開幕する「Brown Sugar」など、どの曲をとっても「脂が乗っているストーンズ曲」の呼び声が高い作品群。特に「Sister Morphine」は麻薬依存を赤裸々に描いた歌詞が物議を醸しました。
グラミー殿堂入りアルバムに選出され、AllMusicでは満点の5つ星評価を獲得。リアルタイムを経験したファンと現在の新しいファンの両方からも「70年代ロックの金字塔」と太鼓判を押される傑作!
Let It Bleed - 闇と光をまとった名盤
1969年、アルタモント事件やベトナム戦争の暗い影が社会を覆う中でリリースされた本作。アルバム・オープナーの「Gimme Shelter」は、その不安と混沌を見事に表現した楽曲として今なお色褪せることはありません。
ブライアン・ジョーンズが亡くなり、ミック・テイラーが加入するという激動期に制作された本作には、バンドの転換期を象徴する多様な音楽性が詰まっています。タイトル曲「Let It Bleed」のブルージーなサウンド、大編成のオーケストラと聖歌隊を起用した壮大な「You Can't Always Get What You Want」など、実験的な試みも随所に。
『Q Magazine』誌では「オールタイム・ベスト100アルバム」で上位にランクイン。特に「Gimme Shelter」は映画やドラマでも数多く使用され、親子数代で聴き継がれる名曲となっています。
初心者向けベストアルバム
Hot Rocks 1964-1971 - デビューから黄金期までのベスト盤
1960年代のブリティッシュ・インヴェイジョンから70年代初頭までの輝かしい軌跡を収録した2枚組ベスト盤。デビュー曲「Come On」から始まり、「(I Can't Get No) Satisfaction」「Paint It, Black」「Ruby Tuesday」など、誰もが一度は耳にしたことがある名曲の数々を網羅しています。
特筆すべきは収録曲の配列。年代順ではなく、バンドのサウンドの進化が体感できるよう緻密に構成されています。ブルースカバーからオリジナル曲への移行、サイケデリックな実験期、そして70年代のブルージーなロックまで、バンドの音楽性の深化を完璧にトレースできます。
1971年のリリース以来、全世界で1,200万枚以上を売り上げ、今なおストーンズの代表的な黄金期ベスト盤として支持され続けています。
FORTY LICKS - 40周年記念、4つの新曲も収録した決定版ベスト
結成40周年を記念して2002年にリリースされた豪華2枚組ベスト盤。60年代からの代表曲に加え、「Don't Stop」「Keys To Your Love」など書き下ろしの新曲4曲も収録。バンドの歴史を総括する記念碑的アルバムとなっています。
Disc 1は60〜70年代の攻撃的なロックンロール群を中心に構成。一方、Disc 2では「Start Me Up」「Mixed Emotions」など80年代以降のポップでメロディアスな楽曲群を収録。2枚の個性的な構成によって、バンドの多面的な魅力を堪能できる内容となっています。
発売と同時に全米アルバムチャート2位を記録。AllMusicの批評家からは「ストーンズの歴史を完璧に総括した決定版ベスト」との高評価を獲得しました。代表曲は完璧に網羅されているので、個人的には最初に聴くならコレをおすすめします!
HONK - 現代に蘇る、ストーンズの"今"を凝縮したニュー・ベスト
2019年リリースの最新ベスト盤。1971年の『Sticky Fingers』以降の楽曲に焦点を当て、近年のライブ音源もボーナストラックとして収録。長年のファンも唸る新鮮な選曲で話題を呼びました。
Ed SheeranやDave Grohl(Foo Fighters)など、現代のスターたちとのコラボレーション音源も収録。ベテラン・バンドの枠を超えて、常に最前線で音楽を追求し続けるストーンズの姿勢が伝わってきます。
デラックス盤には2013年以降のライブ音源を10曲収録。現在進行形のバンドとしての実力を証明する、迫力のパフォーマンスは必聴です。古き良き時代の名曲群が、現代のサウンドで新たな輝きを放つパッケージです!
ローリングストーンズの最新アルバム
Hackney Diamonds - 18年ぶりに示した不滅の創造性
2023年10月、コロナ禍を経て世界が再始動する中でリリースされた待望の新作。『A Bigger Bang』(2005年)以来、実に18年ぶりのオリジナル・アルバム。チャーリー・ワッツ亡き後、スティーブ・ジョーダンが新ドラマーとして加入して初の作品となります。
リード・シングル「Angry」は、キース・リチャーズの印象的なリフとミック・ジャガーの衰えを知らない歌唱力で、世界中のファンを熱狂させました。ポール・マッカートニーがベースで参加した「Bite My Head Off」、エルトン・ジョンとレディー・ガガが共演した「Sweet Sounds of Heaven」など、豪華ゲストの起用も話題に!特に故チャーリー・ワッツが生前に録音していた「Live By The Sword」は、バンドの歴史に新たな1ページを加える感動的な1曲となっています。
全英アルバムチャート1位、米ビルボードでも3位を記録。『Rolling Stone』誌は「80代となった今なお、ロックンロールの最前線を走り続ける姿勢に脱帽」と称賛。『NME』誌も「年齢を重ねてなお進化し続けるバンドの底力を見せつけた傑作」と絶賛しました。
本作の成功により、バンドは「引退」という言葉からさらに遠ざかることとなります。60年以上の歴史を誇るバンドが、なおも最先端のロックンロールを追求し続ける姿は、まさに「世界最強のロックバンド」の名に相応しいと言えるでしょう。変にデジタル臭くなく、サウンドクオリティーも非常に高く、生々しさに溢れています!
初心者向けローリング・ストーンズ入門
ローリング・ストーンズの魅力とは?
「ロックの殿堂」という言葉が似合わない唯一のバンド、それがローリング・ストーンズです。なぜなら、彼らは今もなお最前線で戦い続けているから(笑)デビューから60年以上、平均年齢80歳を超えてなお、最新作『Hackney Diamonds』では従来の枠を超えた冒険的でイキイキとしたサウンドを聴かせてくれました。
魅力の第一は、その反骨精神。ビートルズが「愛」を歌った時代に、彼らは社会の暗部や欲望を赤裸々に描き出しました。「Sympathy for the Devil」での悪魔との共演、「Street Fighting Man」での反体制メッセージ。時には物議を醸しながらも、その姿勢は決して揺らぐことはありませんでした。
さらに注目すべきは、卓越した音楽性です。ミック・ジャガーの特徴的なボーカルとキース・リチャーズのギター・リフは、ロックの教科書として今なお多くの全世界のミュージシャンに影響を与え続けています。
ローリング・ストーンズのアルバムの選び方
初めてストーンズに触れる方には、まず代表的なベスト盤『Hot Rocks 1964-1971』や『FORTY LICKS』からスタートすることをお勧めします。デビューから黄金期までの名曲を一気に堪能できる、最高の入門編と言えるでしょう。
その後は、興味に応じて以下の3つのアプローチが考えられます:
- 年代順アプローチ:
- 60年代→『Let It Bleed』
- 70年代→『Sticky Fingers』『Exile on Main St.』
- 80年代以降→『Tattoo You』『Steel Wheels』
- 音楽性別アプローチ:
- ブルース志向→『Beggars Banquet』
- ハードロック→『Some Girls』
- ポップ寄り→『Emotional Rescue』
- 評価順アプローチ:
- まずは本記事で紹介したTOP3から順に聴いていく
ローリング・ストーンズのアルバム売上とその影響
ストーンズの総アルバム売上は世界累計2億枚以上。モンスター級のセールスだけではなく、1981年の『Tattoo You』は、MTVの台頭とともにミュージックビデオ文化を確立。「Start Me Up」は、その後のロックビデオの方向性を決定づけました。
2023年の最新作『Hackney Diamonds』は、全英1位、全米3位を記録。80代のミュージシャンによる快挙として話題を呼びました。さらに、ストリーミング時代に対応したデジタル戦略も功を奏し、若い世代からの支持も獲得。Spotifyでは月間リスナー数2,000万人を超える人気を誇っています。
彼らの功績は音楽のみにとどまりません。「ローリング・ストーンズ」の商標価格は推定20億ドル以上と言われ、「舌のロゴ」は20世紀を代表するアートワークとして美術史の教科書にも掲載されています。まさに、単なるロックバンドを超えた「文化現象」と言えるでしょう。
まとめ:初心者がローリング・ストーンズ聴くなら、この名盤とベスト盤から!
長〜い歴史を誇るローリング・ストーンズの音楽は、誰もが一度は耳にしたことがあるはずです。しかし、その膨大なディスコグラフィーの前に、どこから聴き始めれば良いのか迷われる方も多いでしょう。
まずは、本記事で紹介したベスト盤から始めることをお勧めします。「(I Can't Get No) Satisfaction」「Paint It, Black」など、誰もが知る名曲の数々を通して、バンドの基本的な魅力を理解することができます。
その後は、70年代の黄金期3部作とも呼ばれる『Let It Bleed』『Sticky Fingers』『Exile on Main St.』へと進むのが王道。それぞれのアルバムが持つ独自の世界観と、時代を超えて色褪せない音楽性に触れることで、ストーンズの真髄に迫ることができるはずです。
80年代以降の作品に興味が湧いたら、『FORTY LICKS』や最新のベスト盤『HONK』がお勧め。さらに2023年の最新作『Hackney Diamonds』まで聴き進めば、60年という時を経てなお進化し続けるバンドの姿に出会えます。
「デビルズ・ロックバンド」「世界最強のロックバンド」など、様々な異名を持つローリング・ストーンズ。彼らの音楽は、聴けば聴くほど新しい発見があり、その魅力に取り憑かれていくはずです。ぜひ、この記事を参考に、あなたなりのストーンズ・ライフを始めてみてくださいね!
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