ロック

メタリカの名曲21選!代表曲からヘヴィー系、バラードまで徹底解説

「名曲ベスト21 Metallica 人気・代表曲」と記載したアイキャッチ

カリフォルニアの薄暗いガレージで、4人の若者がアンプをフルテンにした瞬間、ヘヴィメタルの歴史が塗り替えられた――。

1981年、ロサンゼルスの片隅から始まったシュレッディング&重低音の革命は、やがて世界1億2500万枚以上のアルバムセールスという伝説へと昇華する。「Master of Puppets」で社会の闇を暴き、「Enter Sandman」でメタルをメインストリームへ押し上げ、「Nothing Else Matters」で硬派なメタルヘッズを涙させた。メタリカが40年以上かけて築き上げた音楽帝国は、ヘヴィメタルというジャンルそのものの可能性を無限に拡張している。

地下シーンの過激なスラッシュメタルバンドから、グラミー賞常連のロックレジェンドへ。商業主義への批判と革新への挑戦を繰り返しながら、決して妥協しない姿勢を貫き続ける彼らの軌跡は、音楽における「真のアーティスト性」とは何かを問いかけている。

ここでは、そんな彼らの膨大な渾身のナンバーから厳選した21曲を、一つのバンドが辿った壮大な進化の物語として紐解いていく。初めてメタルの扉を開く人にも、長年の変遷を目撃してきたファンにも、新たな衝撃と深い感動をお届けしよう。

伝説を築いた不朽の代表曲

Enter Sandman ~メタルをメインストリームに導いた歴史的一曲

1991年7月、アルバム『Metallica(ブラックアルバム)』からのリードシングルとして発表された「Enter Sandman」は、メタリカを地下シーンからスタジアムロックの頂点へと押し上げた記念碑的楽曲です。子供の悪夢をテーマにした不気味な歌詞と、一度聴いたら忘れられない重厚なリフが世界中のロックファンを魅了しました。

ビルボードチャートで16位を記録し、MTV時代を象徴するミュージックビデオは音楽チャンネルで繰り返し放送され、メタリカの代名詞として現在も世界中のスタジアムで歓声を呼び起こしています。

Master of Puppets ~スラッシュメタルの最高峰

1986年3月、同名アルバムのタイトルトラックとして発表された「Master of Puppets」は、薬物依存という社会問題を「人形を操る糸」という強烈なメタファーで描いた8分半の大作です。複雑な楽曲構成と技巧的な演奏、そして社会批評性の高い歌詞が完璧に融合し、スラッシュメタルというジャンルの芸術的頂点を示しました。

商業的なシングルカットはされなかったものの、メタル史上最も重要な楽曲の一つとして音楽批評家から絶賛され、ライブの定番曲として30年以上演奏され続けています。

Nothing Else Matters ~メタルバンドが放った珠玉のバラード

1992年4月リリースの「Nothing Else Matters」は、ジェイムズ・ヘットフィールドが電話で恋人と話すために書いたという個人的な楽曲が、普遍的な愛の賛歌へと昇華した奇跡の名曲です。クリーンギターとオーケストラを導入した大胆なアレンジは、当時の硬派なメタルファンを驚愕させました。

全米チャートで11位を記録し、メタルの枠を超えて幅広いリスナーの心を掴んだこの楽曲は、現在でも結婚式から葬儀まで、人生の重要な場面で選ばれる普遍的なバラードとして愛され続けています。

One ~反戦メッセージを叩きつけた衝撃作

1989年1月、アルバム『...And Justice for All』からの初のシングルとして発表された「One」は、第一次世界大戦で四肢と感覚を失った兵士の絶望を描いた7分半の大作です。映画『ジョニーは戦場へ行った』の映像を使用したミュージックビデオは、MTV世代に強烈な反戦メッセージを突きつけました。

メタリカ初のグラミー賞受賞曲となったこの楽曲は、静と動の対比、複雑なリズムチェンジ、そして圧倒的な演奏技術で、プログレッシブメタルの新たな可能性を示した歴史的作品として評価されています。

Fade to Black ~闇の中に光を見出す名曲

1984年12月、アルバム『Ride the Lightning』に収録された「Fade to Black」は、メタリカ初のバラード的要素を持つ楽曲として、当時のメタルシーンに衝撃を与えました。絶望と死をテーマにしながらも、美しいメロディと叙情的なギターソロが心に深く響く6分半の傑作です。

機材盗難という困難な状況から生まれたこの楽曲は、多くのリスナーにとって「暗闇の中でも音楽が救いになる」という希望のメッセージとして受け止められ、現在も世界中のメタルファンの心の支えとなっています。

ライブで爆発するエネルギッシュな名曲

Battery ~爆発的エネルギーを解き放つスラッシュの極致

1986年3月、アルバム『Master of Puppets』のオープニングトラックとして収録された「Battery」は、アコースティックギターの静謐なイントロから一転、激烈なスラッシュメタルへと突入する構成で聴く者の心を鷲掴みにします。サンフランシスコ・ベイエリアのバッテリー・ストリートにちなんで名付けられたこの楽曲は、「暴力からの解放」という逆説的なテーマを扱っています。

ライブでは常にオープニング曲として演奏され、最初の激しいリフが鳴り響いた瞬間、会場全体が一斉にモッシュピットと化す光景は圧巻です。「究極のアドレナリン曲」というファンの声が示すように、メタリカのライブエナジーを象徴する一曲となっています。

Seek & Destroy ~初期衝動が炸裂する永遠の定番

1983年7月、デビューアルバム『Kill 'Em All』に収録された「Seek & Destroy」は、メタリカの原点とも言える荒々しいエネルギーに満ちた楽曲です。シンプルながら中毒性の高いリフと、観客全員で叫べるコーラスパートが特徴で、40年以上経った現在もライブの定番曲として演奏され続けています。

世界中のライブハウスからスタジアムまで、規模を問わず会場を一体化させる力を持つこの楽曲は、「メタルの原初的な興奮を味わえる」と多くのファンから支持され、新旧世代を繋ぐ架け橋となっています。

Whiplash ~首を振らずにいられない究極のヘッドバンガー

1983年7月、デビューアルバム『Kill 'Em All』に収録された「Whiplash」は、その曲名通り激しいヘッドバンギングをテーマにした、メタルカルチャーそのものを体現する楽曲です。疾走感溢れるスピードと攻撃的なリフが、80年代初頭のベイエリア・スラッシュシーンの熱気を現代に伝えています。

ライブでは観客全員が一斉にヘッドバンギングする光景が恒例となっており、「純粋なメタルの喜びがここにある」という多くのファンの感想が印象的です。医学的に推奨されないほどの激しさながら、メタルファンにとっては至福の3分間となっています。

Fuel ~アドレナリン全開のハイオクターン・ロック

1997年6月、アルバム『Reload』に収録された「Fuel」は、スピードへの渇望をガソリンとエンジンのメタファーで表現した、メタリカ流ハードロックの完成形です。よりストレートでグルーヴ感のあるアメリカンなマッスルサウンドは、90年代後半のメタリカの音楽的進化を示しました。

NASCAR(全米自動車競争協会)やエクストリームスポーツのイベントで頻繁に使用されるこの楽曲は、「究極のドライビングミュージック」として、スピード狂たちに愛され続けています。

Creeping Death ~旧約聖書の恐怖を描いた叙事詩的名曲

1984年11月、アルバム『Ride the Lightning』に収録された「Creeping Death」は、旧約聖書の「出エジプト記」における第十の災い(長子の死)を題材にした6分半の大作です。エジプトの初子を奪う「死の天使」の視点から描かれた歌詞と、圧倒的な重量感を持つ極悪リフが印象的です。

ライブでは「Die! Die! Die!」のコーラス部分で観客全員が拳を突き上げる光景が定番となっており、宗教的テーマとメタルの融合という点で、ジャンルの可能性を広げた重要な作品として評価されています。

深い叙情性を湛えるバラード・スローナンバー

The Unforgiven ~許されざる者の魂の叫び

1991年10月、アルバム『Metallica』からのセカンドシングルとして発表された「The Unforgiven」は、社会の規範に抑圧された個人の悲劇を描いた叙情的な楽曲です。「Nothing Else Matters」とは対照的に、より暗く内省的なトーンで、抑圧と反抗のテーマを美しいメロディに乗せて歌い上げました。

後に「The Unforgiven II」「The Unforgiven III」というシリーズ化された三部作の起点となったこの楽曲は、6分半という長尺ながら全米チャートで35位を記録し、「聴くたびに新しい解釈が生まれる」という多くのファンの声が示すように、奥深い文学性を持つ作品として評価されています。

Welcome Home (Sanitarium) ~精神病院からの叫び

1986年8月、アルバム『Master of Puppets』に収録された「Welcome Home (Sanitarium)」は、精神病院に閉じ込められた患者の視点から描かれた6分半の叙事詩的作品です。美しくも不穏なクリーンギターのイントロから始まり、徐々に狂気へと傾いていく楽曲構成は、精神の崩壊を音で表現した傑作といえます。

メンタルヘルスという当時はタブー視されていたテーマに正面から取り組んだこの楽曲は、現代においてより一層の意義を持ち、「音楽を通じて精神的苦痛を理解できた」という感謝の声が数多く寄せられています。

The Day That Never Comes ~暴力の連鎖を断ち切る祈り

2008年8月、アルバム『Death Magnetic』からのリードシングルとして発表された「The Day That Never Comes」は、虐待や戦争における暴力の連鎖をテーマにした7分56秒の大作です。静かなバラード調のパートから激烈なメタルへと展開する構成は、「One」の系譜を受け継ぎながらも、より成熟した音楽性を示しました。

イラク戦争の映像を使用したミュージックビデオは議論を呼びましたが、「許しと解放の難しさ」という普遍的なテーマは多くのリスナーの共感を呼び、メタリカの社会的メッセージ性の高さを改めて証明しました。

Low Man's Lyric ~ハーディ・ガーディが奏でる哀愁の調べ

1997年11月、アルバム『Reload』に収録された「Low Man's Lyric」は、中世楽器ハーディ・ガーディを使用した実験的なバラードです。アルコール依存症と孤独をテーマにしたこの楽曲は、メタリカの音楽的冒険心を示す異色作として、発表当時は賛否両論を巻き起こしました。

「メタリカ最も過小評価されている楽曲」という熱心なファンの声も多く、7分半という長尺の中に込められた深い情感と文学的な歌詞は、時間をかけて真価が理解される類の芸術作品といえるでしょう。

Mama Said ~母への感謝を綴った心温まるバラード

1996年11月、アルバム『Load』に収録された「Mama Said」は、ジェイムズ・ヘットフィールドが亡き母への想いを綴った、カントリー調の異色バラードです。メタリカのディスコグラフィーの中でも特に個人的で感情的な楽曲として知られています。

スティールギターを使用した温かいアレンジは、当時のメタルファンを驚かせましたが、「親への感謝を思い出させてくれる」という感動の声が多数寄せられ、メタルというジャンルの表現の幅を広げた重要な作品となっています。

挑戦と進化を示す革新的名曲

St. Anger ~生々しい怒りを叩きつけた問題作

2003年6月、同名アルバムのタイトルトラックとして発表された「St. Anger」は、ギターソロを完全に排除し、絶妙なチューニングがされたドラムキットの独特な音色を前面に押し出した実験的な楽曲です。バンド内の不和と再生をテーマにしたこの作品は、発表当時最も賛否が分かれたメタリカの楽曲となりました。

「伝統的なメタルの美学を捨て去った」という批判と、「生々しい感情の爆発」という称賛が交錯する中、この楽曲はメタリカが決して過去の成功に甘んじない姿勢を示す象徴的作品として音楽史に刻まれています。

The Memory Remains ~マリアンヌ・フェイスフルとの異色コラボ

1997年11月、アルバム『Reload』からのリードシングルとして発表された「The Memory Remains」は、60年代のロックアイコン、マリアンヌ・フェイスフルをゲストボーカルに迎えた異色の楽曲です。名声の儚さと忘れられゆく記憶をテーマにした歌詞に、フェイスフルの妖艶な「La-la-la」のコーラスが印象的に絡みます。

全米チャートで28位を記録し、MTV Video Music Awardsで「最優秀ハードロック・ビデオ賞」を受賞したこの楽曲は、メタルとグラムロックの融合という新たな可能性を示しました。

Hardwired ~現代社会への怒りを3分に凝縮

2016年8月、アルバム『Hardwired... to Self-Destruct』からの先行シングルとして発表された「Hardwired」は、デジタル時代の情報過多と操作される人間をテーマにした3分10秒の疾走曲です。8年ぶりのアルバムからの第一弾として、メタリカの健在ぶりを世界に示しました。

初期のスラッシュメタルの激しさと、長年のキャリアで培った洗練されたソングライティングが見事に融合し、「メタリカは決して衰えない」というファンの確信を強固なものとした重要な作品です。

Spit Out the Bone ~7分の最速スラッシュメタル大作

2016年11月、アルバム『Hardwired... to Self-Destruct』に収録された「Spit Out the Bone」は、人工知能とトランスヒューマニズムをテーマにした7分超の超高速スラッシュナンバーです。60代を迎えたメタリカが、20代のバンドを凌駕する演奏技術と体力を見せつけた驚異的な楽曲となっています。

「メタリカ史上最速の楽曲の一つ」として多くのファンから称賛され、ライブでは最後の力を振り絞るようなエネルギッシュなパフォーマンスで観客を圧倒し続けています。

Atlas, Rise! ~ギリシャ神話が蘇る重厚なる叙事詩

2016年10月、アルバム『Hardwired... to Self-Destruct』からのセカンドシングルとして発表された「Atlas, Rise!」は、ギリシャ神話の巨人アトラスをモチーフに、現代人が背負う重圧と解放をテーマにした6分28秒の大作です。重厚なリフと叙事詩的な楽曲構成が印象的です。

グラミー賞の「最優秀ロック・ソング賞」を受賞したこの楽曲は、神話的なテーマとモダンなサウンドの融合により、メタリカの奥深い創造性を示す作品として高く評価されています。

72 Seasons ~人生最初の18年間の影響を歌った最新作

2023年4月、同名アルバムのタイトルトラックとして発表された「72 Seasons」は、人生最初の18年間(72シーズン)が人格形成に与える影響をテーマにした大作です。60代を迎えたバンドが自らの人生を振り返りながら、普遍的な人間の成長をテーマに据えた深い作品となっています。

「年齢を重ねても進化し続けるメタリカ」という姿勢を示したこの楽曲は、世界各国のチャートで上位を記録し、40年以上のキャリアを持つバンドの衰えぬ創造力を証明しました。

メタリカの名曲:まとめ

1981年、ロサンゼルスの小さな広告から始まった「ヘヴィメタルバンドのドラマー募集」という一行は、やがて音楽史を塗り替える伝説の序章となりました。

ガレージで生まれた破壊的なサウンドは、「Master of Puppets」でスラッシュメタルの芸術的頂点を極め、「Enter Sandman」でメタルをメインストリームに押し上げ、「Nothing Else Matters」でジャンルの境界を消し去りました。爆発的な「Battery」から内省的な「The Unforgiven」まで、彼らの音楽は常に時代の空気を切り裂き、リスナーの魂を揺さぶり続けています。

メタリカの真の偉大さは、その圧倒的な演奏技術だけでなく、決して妥協しない芸術的姿勢にあります。スラッシュメタルの革命者から、ロックの殿堂入りアーティストまで、商業主義の誘惑と批判の嵐を乗り越えながら、常に音楽的誠実さを貫き通してきました。

彼らの音楽は、単なる轟音を超えた深い人間性を内包しています。怒りと希望、破壊と創造、そして絶望と再生――。メタリカの楽曲は、現代社会の矛盾と人間の本質的な感情に寄り添い、時には激しく鼓舞し、時には静かに癒しを与えてくれます。

現在も進化を止めない彼らの音楽が、今後どのような新しい衝撃と感動を届けてくれるのか、期待は尽きません。

本記事で紹介した21曲が、あなたのメタリカ体験をより豊かなものにし、ヘヴィメタルというジャンルの持つ無限の表現力を感じるきっかけとなることを心から願っています。彼らの音楽とともに、あなたの人生にも新しい情熱が燃え上がることでしょう。

〈PR〉最高音質をまずは30日間無料で体験♪

-ロック