ロック

ジェフ・ベックの名曲20選!ギターの魔術師が奏でる革新と情熱の軌跡

「名曲ベスト20 Jeff Beck 人気・代表曲」と記載したアイキャッチ

ヤードバーズの若きギタリストが、エリック・クラプトンの後任として加入した1965年のある日、ロック史に新たな伝説が刻まれ始めた――。

そう、フィードバック奏法、ディストーション、そしてアームを駆使した革新的なサウンドで、ギター演奏の概念そのものを書き換えたジェフ・ベックだ。「ハイ・ホー・シルヴァー・ライニング」で時代を切り開き、「哀しみの恋人たち」でギターインストゥルメンタルの新境地を開拓し、「ピープル・ゲット・レディ」で魂の叫びを六弦に込めた。50年以上にわたるキャリアで築き上げた伝説は、ギターという楽器の無限の可能性を私たちに示し続けている。

ブルース、ロック、ジャズ、フュージョン――ジャンルの壁を自在に越え、常に実験精神を忘れず、決して同じ場所に留まらない。8度のグラミー賞受賞、2度のロックの殿堂入りという偉業の裏には、完璧主義者としての妥協なき姿勢と、音楽への純粋な情熱があった。

本記事では、2023年1月に惜しまれつつこの世を去ったギターの巨人が残した膨大な作品群から、厳選した20曲をその音楽的進化とともに紐解いていく。ロックの黎明期から最晩年まで、ジェフ・ベックという唯一無二のアーティストの魂の軌跡を、あなたも体感してほしい。

ヤードバーズ時代の衝撃作

Shapes of Things ~サイケデリック・ロックの夜明け

1966年2月リリースの「シェイプス・オブ・シングス」は、ジェフ・ベックがヤードバーズ在籍中に生み出した最も革新的な楽曲です。当時としては前衛的なファズトーンと自然なトリルを駆使したギターソロは、まさにサイケデリック・ロックの幕開けを告げる歴史的瞬間でした。

全英チャートで3位を記録したこの楽曲は、環境破壊をテーマにした社会派の歌詞と、攻撃的なギターリフの組み合わせで音楽評論家から絶賛されました。「ギターが歌っている」という表現がこれほど似合う演奏は、当時ほとんど存在しなかったのです。

Heart Full of Soul ~東洋的旋律との融合

1965年6月発表の「ハート・フル・オブ・ソウル」は、ジェフ・ベックがヤードバーズに加入して間もない時期の代表曲です。当初シタールの使用が検討されたこの楽曲で、ベックはギターで東洋的な音色を見事に再現し、新たな表現の可能性を示しました。

全英2位、全米9位を記録したこのヒット曲は、西洋と東洋の音楽要素を融合させた先駆的な作品として、後のロック史に大きな影響を与えています。ベックの柔軟な音楽性と探究心が早くも開花した傑作です。

Over Under Sideways Down ~ギターフレーズの教科書

1966年5月リリースの「オーヴァー・アンダー・サイドウェイズ・ダウン」は、ジェフ・ベックの創造したギターリフがロック史に残る金字塔となった楽曲です。複雑ながらある意味ギターっぽくない(!?)キャッチーなフレーズは、無数のギタリストたちがコピーする定番フレーズとなりました。

全英10位を記録したこの作品は、ベックのテクニカルな側面と音楽的センスの両方が結実した、ヤードバーズ時代の集大成ともいえる重要な一曲です。

ジェフ・ベック・グループ時代の名作

Beck's Bolero ~インストゥルメンタルの革命

1967年3月にB面曲として発表された「ベックズ・ボレロ」は、ジェフ・ベックのソロキャリアの実質的な出発点となった記念碑的な楽曲です。ジミー・ペイジ、ジョン・ポール・ジョーンズ、キース・ムーンという豪華メンバーとのセッションから生まれたこの曲は、クラシックとロックの融合を見事に成し遂げました。

ラヴェルの「ボレロ」にインスパイアされたこのインスト曲は、ギターインストゥルメンタルの可能性を大きく広げ、後のプログレッシブ・ロックやハードロックの発展に多大な影響を与えた歴史的名演です。

Morning Dew ~燃える魂!なブルースロック

1968年のデビューアルバム『Truth』に収録された「モーニング・デュー」は、ロッド・スチュワートの魂のこもったボーカルとベックの感情的なギターワークが完璧に融合した名曲です。核戦争後の世界を描いた重いテーマを、ブルース・ロックの形式で表現したこの楽曲は、多くのアーティストにカバーされ続けています。

ベックのトーン・コントロールとエモーショナルな表現力が存分に発揮されたこの演奏は、「ギターで泣く」という表現の真の意味を教えてくれる傑作です。

You Shook Me ~ブルースの再解釈

同じく『Truth』に収録された「ユー・シュック・ミー」は、マディ・ウォーターズのブルース・クラシックを、ジェフ・ベック流に大胆にアレンジした作品です。オリジナルの持つブルースの魂を保ちながら、ハードロック的なアプローチで新たな生命を吹き込みました。

レッド・ツェッペリンも同時期に同曲をカバーしましたが、ベックのバージョンはより実験的で、スローテンポの中に緊張感とドラマ性を持たせた独自の解釈が光ります。

Plynth (Water Down the Drain) ~プログレッシブな実験

1969年のアルバム『Beck-Ola』収録の「プリンス(ウォーター・ダウン・ザ・ドレイン)」は、ジェフ・ベック・グループの実験精神が結実した楽曲です。複雑な構成とダイナミックな展開は、後のプログレッシブ・ロックを予見させる先進性を持っていました。

ニッキー・ホプキンスのピアノとベックのギターが織りなす音の絵画は、ロックミュージックの表現領域を大きく拡張した重要な作品として評価されています。

フュージョン時代の革新作

Cause We've Ended as Lovers ~涙のバラード

1975年のアルバム『Blow by Blow』に収録された「哀しみの恋人たち」は、スティーヴィー・ワンダー作のこの楽曲を、ベックが極限まで感情的に演奏した不朽の名作です。一音一音に魂を込めた演奏は、「ギターが歌う」という表現の究極の形を示しています。

メロディックでありながら即興性も兼ね備えたこの演奏は、世界中の無数のギタリストに影響を与え、ギターインストゥルメンタルの代表曲として現在も愛され続けています。ベックのトレードマークともいえるボリューム奏法(バイオリン奏法)の美学が凝縮された一曲です。

Freeway Jam ~疾走するエネルギー

同じく『Blow by Blow』収録の「フリーウェイ・ジャム」は、マックス・ミドルトン作のこのファンキーな楽曲に、ベックが目も眩むような鬼弾きと独創的なフレージングを注ぎ込んだ代表曲です。タイトル通り、ハイウェイを疾走するような爽快感とスピード感に満ちています。

ジャズ・フュージョンの枠組みの中で、ロックのエネルギーとテクニカルな演奏技術を完璧に融合させたこの作品は、フュージョン時代のベックの魅力が凝縮された名演として高く評価されています。

Scatterbrain ~テクニックと感性の融合

1975年『Blow by Blow』のブッ飛び枠を飾る「スキャッターブレイン」は、複雑なコード進行の上を自在に舞うベックのギターが圧巻の楽曲です。ジャズ的な和声感覚とロックのダイナミズムが見事に融合し、新しいギター音楽の可能性を示しました。

この曲での演奏は、単なる技術の誇示ではなく、音楽的な必然性に裏打ちされた表現であり、ベックの芸術家としての成熟を示す重要な作品となっています。

Led Boots ~ハードフュージョンの到達点

1976年のアルバム『Wired』からの「レッド・ブーツ」は、よりアグレッシブでロック的なアプローチを持ち込んだフュージョン・ナンバーです。ヤン・ハマーとの共作によるこの楽曲は、電子音楽とギターロックの融合という新たな領域を開拓しました。

キーボードとギターの激しい掛け合いは、まさに火花を散らすような緊張感に満ち、フュージョンという音楽形態の持つダイナミックな可能性を最大限に引き出した傑作です。

Goodbye Pork Pie Hat ~チャールズ・ミンガスへのオマージュ

同じく『Wired』に収録された「グッバイ・ポーク・パイ・ハット」は、ジャズの巨人チャールズ・ミンガスの名曲を、ベックが独自の解釈で演奏した感動的な作品です。原曲の持つ哀愁とジャズの深みを保ちながら、ベックならではの表現力で新たな命を吹き込みました。

この演奏におけるベックのトーンの美しさと、微妙なニュアンスのコントロールは、彼がジャズの精神を深く理解していることを証明する素晴らしい名演です。

エレクトロニック時代の挑戦

People Get Ready ~ロッド・スチュワートとの再会

1985年のアルバム『Flash』からのシングル「ピープル・ゲット・レディ」は、かつてのバンドメイト、ロッド・スチュワートとの感動的な再共演を果たした名曲です。カーティス・メイフィールドのソウル・クラシックを、二人の成熟した音楽性で再解釈したこのバージョンは、全米チャートでトップ50入りを果たしました。

スチュワートの深みを増したボーカルと、ベックの心に染み入るギターワークの組み合わせは、時を超えた友情と音楽的絆の強さを感じさせる、感動的な作品となっています。

Escape ~プログレッシブな音風景

1985年『Flash』に収録された「エスケープ」は、ヤン・ハマーとの再タッグで制作されたシンセサイザーとギターが織りなす壮大な音風景です。80年代のエレクトロニック・サウンドとベックのギターが見事に融合し、映画音楽的なドラマ性を持つ楽曲に仕上がりました。

この作品は、新しい技術を恐れず取り入れるベックの柔軟な姿勢と、どんな時代でも自分らしさを失わない一貫性を示す好例といえるでしょう。

Guitar Shop ~ベック流タッピング

1989年のアルバム『Guitar Shop』からのタイトル曲は、エディ・ヴァン・ヘイレンが普及させたタッピング奏法を、ベック流に昇華させた技巧的な作品です。この曲でベックは、グラミー賞の「ベスト・ロック・インストゥルメンタル・パフォーマンス」を受賞しました。

ハイテクなプロダクションの中でも、ベックの個性が際立つこの楽曲は、時代に適応しながらも自己のスタイルを貫く彼の姿勢を示す重要な作品です。

キャリア後期の円熟作

Where Were You ~グラミー受賞の名演

1989年のアルバム『Guitar Shop』収録の「ホエア・ワー・ユー」は、ベックがグラミー賞を受賞した感動的なバラードです。アームとボリューム奏法を駆使した、まるで人の声のような優雅な表現力豊かな演奏は、多くのギタリストに衝撃を与えました。

この曲での演奏は、テクニックが感情表現のための手段であることを完璧に示しており、ベックの芸術性が最高度に達した瞬間を捉えた傑作です。宇宙的な広がりを持つサウンドスケープは、聴く者を別次元へと誘います。

A Day in the Life ~ビートルズへの敬意

2008年のアルバム『Performing This Week... Live at Ronnie Scott's』で披露された「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」は、ビートルズの名曲をベックが大胆にインストゥルメンタルアレンジした驚異的な演奏です。原曲の持つ幻想的な雰囲気を保ちながら、ギター一本で壮大な世界観を表現しました。

この演奏は、ベックの音楽的引き出しの広さと、どんな名曲も自分の色に染め上げる圧倒的な個性を示す素晴らしい解釈として称賛されています。

Over the Rainbow ~ジャズスタンダードの新解釈

2010年のアルバム『Emotion & Commotion』に収録された「オーヴァー・ザ・レインボウ」は、映画『オズの魔法使い』の名曲を、ベックが極めて繊細かつ美しく演奏した感動作です。オーケストラとの共演で実現したこの録音は、グラミー賞を受賞しました。

ベックのギターが奏でる優しく温かいメロディは、この普遍的な名曲に新たな生命を与え、多くの人々の心に深い感動をもたらしています。技巧を超えた境地に達した演奏です。

Nessun Dorma ~オペラとロックの融合

同じく『Emotion & Commotion』に収録された「ネッスン・ドルマ」は、プッチーニのオペラ『トゥーランドット』の名アリアを、ベックがギターで再現した壮大な作品です。オーケストラをバックに、ベックのギターが歌い上げるこの演奏は、クラシック音楽とロックの完璧な融合を実現しました。

この挑戦的な試みは大成功を収め、ベックの音楽的視野の広さと、ジャンルの壁を越える普遍的な表現力を世界に示しました。

Live in the Dark ~ロッシ・ヴァレンティとの共演

「ライヴ・イン・ザ・ダーク」は、ロージー・ボーンズをフィーチャーしたコンテンポラリー要素が高い楽曲です。ベックのヘヴィーかつメロディアスなギターワークと、ロージー・ボーンズの情感豊かなボーカルが見事にマッチしています。

この楽曲は、ベックが晩年に至ってもなお、新しいコラボレーションと表現の可能性を追求し続けていたことを示す感動的な作品ですよね!

ジェフ・ベックの名曲:まとめ

1944年、ロンドン南部に生まれた一人の少年が手にしたギターから始まった物語は、ロック史に燦然と輝く伝説となりました。

ヤードバーズでの衝撃的なデビューから、ジェフ・ベック・グループでのハードロック革命、そして『Blow by Blow』でのフュージョンへの大胆な転身――。ベックの音楽は常に進化し、決して同じ場所に留まることはありませんでした。「シェイプス・オブ・シングス」で時代を切り開き、「哀しみの恋人たち」で涙を誘い、「ピープル・ゲット・レディ」で魂を震わせた彼のギターは、まさに楽器を超えた「声」そのものでした。

ジェフ・ベックの真の偉大さは、その驚異的な演奏技術だけでなく、音楽に対する飽くなき探究心にあります。ブルース、ロック、ジャズ、フュージョン、エレクトロニカ、クラシック――あらゆるジャンルの壁を越え、常に新しい表現を求め続けた姿勢は、真のアーティストとは何かを私たちに教えてくれます。

彼の音楽が持つもう一つの特質は、技巧と感情の完璧なバランスです。どれほど複雑なフレーズを弾いても、そこには常に深い感情が込められていました。「テクニックは感情を表現するための手段である」――ベックのギターが語りかけるこのメッセージは、すべてのミュージシャンへの普遍的な教えとなっています。

「ギターは人間の声の延長であるべきだ」

生前、ベックが語ったこの言葉通り、彼のギターは笑い、泣き、叫び、囁きました。2023年1月10日、78歳でこの世を去った後も、残された音楽は永遠に生き続け、世界中の音楽ファンとギタリストたちに感動とインスピレーションを与え続けています。

本記事で紹介した20曲が、あなたのジェフ・ベック体験をより深いものにし、ギターという楽器の無限の可能性を感じるきっかけとなることを心から願っています。彼の音楽とともに、あなたの心にも新しい感動の扉が開かれることでしょう。伝説のギタリスト、ジェフ・ベック――その名は、永遠にロック史に刻まれ続けます。

【関連記事】

ギターが歌い出す!ジェフベックが凄いと言われる9つの理由

オススメは?ジェフ・ベックの名盤TOP5と初心者向けベストアルバム

〈PR〉最高音質をまずは30日間無料で体験♪

-ロック
-