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ロック

クイーン「Jazz (ジャズ)」:7枚目のアルバムを解説。収録曲とレビュー

「JAZZ QUEEN アルバム解説」と記載したアイキャッチ

クイーンの音楽歴史において特異な位置を占める7枚目のオリジナルアルバム「Jazz(ジャズ)」は、1978年11月10日にリリースされました。

このアルバムは、そのタイトルが示すようにジャズ音楽にインスパイアされたわけではありませんが、クイーンがこれまでに探求してきた音楽の幅をさらに広げ、多彩なジャンルを取り入れた作品として注目されます。

この記事では、このアルバムについての詳細や魅力を解説していきます。

QUEEN 7枚目のアルバム「Jazz (ジャズ)」概要

販売年月日: 1978年11月10日
収録曲数: 全13曲
売上枚数: 世界で約500万枚
アルバムの特色: クイーンが様々な音楽ジャンルに挑戦し、実験的なアプローチを試みた作品。ロック、ファンク、ディスコ、フォーク、ブルースといった多彩な音楽スタイルが融合しています。
参加メンバー: フレディ・マーキュリー(ボーカル、ピアノ)、ブライアン・メイ(ギター、ボーカル)、ジョン・ディーコン(ベース)、ロジャー・テイラー(ドラム、ボーカル)
プロデューサー: クイーン、ロイ・トーマス・ベイカー
収録スタジオ: モンルー・スタジオ(フランス)、マウンテン・スタジオ(スイス)、スーパーベア・スタジオ(フランス)
レーベル: EMI Records、Elektra Records

特別なエディションとしては、2011年にリマスター版がリリースされ、ボーナストラックや未発表トラックが追加されました。

収録曲:解説とレビュー

1. Mustapha (ムスタファ)

  • 作詞作曲: フレディ・マーキュリー

世界の音楽に対する愛を表現した「Mustapha」は、アルバムのオープニングトラックとして、リスナーを即座に異文化の旅へと誘います。

この曲は、中東風のメロディとリズムを特徴とし、フレディの多様なボーカル表現が際立っています。
夜明けの砂漠を一頭の駿馬が駆け抜ける情景を想起させるような壮大さと神秘性を持ち合わせています。

2. Fat Bottomed Girls (ファット・ボトムド・ガールズ)

  • 作詞作曲: ブライアン・メイ

ブライアン・メイが書いたこの曲は、ロックンロールの魂を呼び覚ますギターリフと、思い切りの良い歌詞が特徴です。
この印象的なリフが、左右のチャンネルにダブリング録音されて、そこからそれぞれ微妙に違うフレージングで分離させている瞬間がとてもカッコいい。

ロックの古典的な魅力と現代的なセンスが融合したこのトラックは、まるで年代を超えたバイカーの集会のような自由さと野性味を感じさせます。ライブ感に溢れたミックスダウンの技術も見事で、リスナーを直接ライブの現場へと引き込む力を持っています。

3. Jealousy (ジェラシー)

  • 作詞作曲: フレディ・マーキュリー

「Jealousy」は、フレディ・マーキュリーの繊細なピアノ演奏と、切ない感情を描いた歌詞が心に響くバラードです。

この曲は、愛の複雑さとはかなさを水彩画のように繊細に表現しており、リスナーの心の琴線に触れる美しいメロディが特徴です。
クイーンのバラードの中でも、特にお気に入りの曲のひとつです。

特に、歌メロに絡みついていくベースラインが鳥肌モノです。

4. Bicycle Race (バイシクル・レース)

  • 作詞作曲: フレディ・マーキュリー

フレディ・マーキュリーのユニークな発想から生まれた「Bicycle Race」は、クイーンの遊び心と楽曲をパズルのように組み立てていく技巧が光る楽曲です。

SE(サウンドエフェクト)には、実際の自転車のベルが使用されており、曲の中で一種の音楽的ギミックとして機能しています。楽曲の構成は一風変わっており、自転車レースの興奮と動きを音楽で表現しているかのようです。

オーケストレーションの重ね方も匠の技が光ります。

5. If You Can't Beat Them (うちひしがれて)

  • 作詞作曲: ジョン・ディーコン

ジョン・ディーコンが書いたこの曲は、ポジティブなメッセージとキャッチーなメロディが特徴的なロックナンバーです。

リズミックなベースラインと明るいギターリフが、困難に直面しても前向きに生きようとする姿勢を力強く後押しします。
さんさんと輝く太陽の下で開放的なフェスティバルを楽しむかのような気分を呼び起こします。

人生の障害を乗り越える勇気と楽観主義を、ロックのビートと共に躍動的に伝えます。

6. Let Me Entertain You (レット・ミー・エンターテイン・ユー)

  • 作詞作曲: フレディ・マーキュリー

フレディ・マーキュリーによるこの楽曲は、ステージ上での彼の華やかなパフォーマンスをそのまま楽曲にしたかのようです。

鋭いギターリフとドラマチックなボーカルが特徴で、まるで聴衆を手招きして舞台の光の中へと導くマジシャン。
この曲は、ショービジネスの魅力と虚飾を軽妙に描き出しており、クイーンのエンターテイメント集団としての側面を強調しています。

7. Dead On Time (デッド・オン・タイム)

  • 作詞作曲: ブライアン・メイ

ブライアン・メイのテクニカルなギタープレイが際立つ「Dead On Time」は、雷のような速さと衝撃を音楽で表現しています。
まさに嵐の目の中を駆け抜けるような緊張感とスリルを見せつける。

人生を全速力で駆け抜ける勇敢な魂の叫びとも言えるでしょう。
ぞうそう、くれぐれも感電注意で聴いてください!

8. In Only Seven Days (セヴン・デイズ)

  • 作詞作曲: ジョン・ディーコン

ジョン・ディーコンが提供するこの軽やかなバラードは、一週間の短い休暇中に起こった恋の物語を描いています。

優しいメロディと心温まる歌詞が、刹那的ながらも美しい恋愛のひとときを思い起こさせます。
この曲は、日常からの一時的な逃避を夢見るすべての人々へ捧げられた、甘く切ないラブソングです。

サウンド的にも、ナイロン弦のガットギターの音色がどこか懐かしい味をいい感じに演出していますね。

9. Dreamer's Ball (ドリーマーズ・ボール)

  • 作詞作曲: ブライアン・メイ

ブライアン・メイがエルヴィス・プレスリーへのトリビュートとして書いた「Dreamer's Ball」は、1970年代のクイーンによるアコースティックなブルースへの敬意を表しています。

夢見る人々のための幻想的な舞踏会を描いており、シンプルなブルース進行に乗せるメロディーと、添えられるハーモニーの美しさが心を温かくします。

10. Fun It (ファン・イット)

  • 作詞作曲: ロジャー・テイラー

ロジャー・テイラーによるこのトラックは、ディスコとロックの融合を試みた実験的な楽曲です。

エネルギッシュなリズムとファンキーなギターが、夜の都会を駆け巡るカラフルなネオンライトを連想させます。
普段忘れがちな「楽しむことの大切さ」を思い出させてくれる、踊りたくなるようなビートに身体を委ねましょう。

11. Leaving Home Ain't Easy (去りがたき家)

  • 作詞作曲: ブライアン・メイ

ブライアン・メイがソフトなボーカルで歌うこのバラードは、家を離れる寂しさとその決断の重さを優しく描き出しています。

アコースティックギターの温かみある音色が、遠く離れた場所へと旅立つ心情をさりげなく慰めます。
これから長い旅路の始まりに立つ者へ送られる、静かな応援歌です。

12. Don't Stop Me Now (ドント・ストップ・ミー・ナウ)

  • 作詞作曲: フレディ・マーキュリー

生命力と自由を愛する心が爆発したようなこの曲は、「Jazz」アルバムの中でも特に輝く名曲です。

ピアノのリズミカルなイントロから始まり、加速するビートと壮大なコーラスが続く中、リスナーは自己実現の喜びとともに無限の可能性を感じさせられます。

ブライアンメイのギターが、ギター・ソロまで一切入っておらず、ギター・ソロで一気に爆発していくというのも思い切ったアレンジ。

宇宙を駆け巡る彗星のようなスピード感と躍動感を持ち、聴く者の細胞を隅々まで活性化させてくれる不思議な魅力を持つ一曲!

13. More of That Jazz (モア・オブ・ザット・ジャズ)

  • 作詞作曲: ロジャー・テイラー

アルバムの締めくくりを飾る「More of That Jazz」は、ロジャー・テイラーが社会への批評的な視点をヘビーなジャズ風?のアレンジメントで表現した楽曲です。

繰り返されるフレーズとリズミカルなビートが、まるで現代社会の繰り返しとその中での個人の模索を象徴しているかのよう。
この曲は、アルバム全体を通じて探求された多様性へのオマージュとも取れます。

アルバムの特徴がわかる、レーダーチャート

QUEEN 7枚目のアルバム「Jazz (ジャズ)」の特徴を示したレーダーチャート

アルバム・ジャケット

クイーンの7枚目のアルバム『Jazz』のジャケットデザインは、The Cream Groupによって担当され、特徴的な円(円盤)のモチーフを中心にしたデザインが採用されています。

ジャケットデザインの特徴

  • デザイナー: The Cream Groupによってデザインされた。
  • モチーフ: 多くの円(円盤)が特徴的なモチーフとして使われており、レコード盤のイメージを形成しているようにも見える。
  • 内袋とインサート: このアルバムの特徴的な部分は、実際には内袋やインサートに見られます。特に有名なのが、ロジャー・テイラーがデザインに関与したとされる「自転車レース」のポスターです。このポスターには、ヌードの女性たちが自転車に乗ってレースをしている様子が描かれており、当時としてはかなり大胆なデザインでした。

チャート順位

英国 (UK)

英国ではアルバムチャートで最高2位に達しました。これはクイーンが自国で持つ堅固な人気と、『Jazz』がファンに受け入れられたことを示しています。

アメリカ (US)

アメリカでは、Billboard 200で最高6位にランクインしました。アルバムからは「Don't Stop Me Now」や「Bicycle Race / Fat Bottomed Girls」などのシングルがリリースされ、特に「Don't Stop Me Now」は後にクイーンの代表曲の一つとなりました。

日本

日本ではオリコンアルバムチャートで5位に入りました。クイーンのアルバムが日本でも高い人気を誇っていることを物語っています。

ゴールドディスクやプラチナディスクの認定

オーストリア: ゴールド認定
カナダ: プラチナ認定
フランス: ゴールド認定
ドイツ: ゴールド認定
日本: ゴールド認定
オランダ: プラチナ認定
ポーランド: プラチナ認定
スイス: プラチナ認定
イギリス: ゴールド認定
アメリカ合衆国: プラチナ認定

世間の評価(評論家・ファンの評価)

批評家からの評価

  • 当時の評価: リリース当時、一部の批評家はアルバムの多様性を称賛し、クイーンがさまざまな音楽スタイルを取り入れることで聴き手に新鮮な体験を提供していると評価しました。しかし、他の批評家はこの多様性を一貫性の欠如と捉え、アルバム全体の方向性に疑問を投げかける評価もありました。
  • 再評価: 時が経つにつれ、『Jazz』はクイーンのディスコグラフィーにおいて重要な地位を占めるアルバムとして再評価されています。特に「Don't Stop Me Now」や「Fat Bottomed Girls」、「Bicycle Race」といったヒット曲は、クイーンの代表作として広く認知され、アルバム全体の評価を高める要因となっています。

ファンからの評価

ファンの支持: クイーンのファンは、『Jazz』をバンドの創造性が光る作品として高く評価しています。アルバムに含まれる楽曲の多様性と、クイーン特有のユーモアと実験精神が反映された楽曲は、多くのファンに愛されています。

長期的な人気: 「Don't Stop Me Now」は、特にファンからの支持が高く(※1)、多くの投票やアンケートでクイーンの最も人気のある曲の一つとして選ばれています。この曲を含むアルバム『Jazz』は、ファンの間で長期にわたり愛聴されている作品です。

※1
Rolling Stone誌の読者投票: 2014年、Rolling Stone誌の読者による「クイーンの最も偉大な曲」の投票で、『Don't Stop Me Now』は第3位に選ばれました。この投票結果は、ファンからのこの曲の支持が非常に高いことを示しています。

BBC Radio 2の投票: 2014年にBBC Radio 2は「クイーンの最も偉大なヒット曲」というリスナー投票を行い、「Don't Stop Me Now」が1位に選ばれました。この投票は、クイーンの楽曲の中で最も愛されている曲を決めるものでした。

映画やテレビ番組での使用: 『Don't Stop Me Now』は、映画『ショーン・オブ・ザ・デッド』をはじめとする数多くの映画やテレビ番組で使用されています。

総合的な視点

『Jazz』に対する世間の評価は、リリース時から現在に至るまで変化し続けていますが、アルバムはクイーンの音楽キャリアにおける実験的で多様な試みを象徴する作品として、その地位を確立しています。批評家からの混在した初期の評価にも関わらず、アルバムは時を経て肯定的に再評価され、特にファンからはバンドの代表作の一つとして広く認識されています。『Jazz』は、クイーンが音楽的な冒険を恐れずに挑んだ精神の証であり、その影響は今もなお続いています。

アルバム・タイトル

アルバムタイトルは、その音楽性の幅広さと、ジャンルの枠を超えた実験的なアプローチを反映しています。ただし、アルバムには伝統的なジャズ音楽はほとんど含まれておらず、タイトルはむしろクイーンの多様性と音楽的自由を象徴しています。

洋題:『Jazz』

  • 意味: 英語で「ジャズ」という言葉は、もともとは音楽ジャンルを指しますが、このアルバムのコンテキストでは、クイーンが探求する音楽的多様性と創造性の象徴として使われています。アルバム『Jazz』は、ハードロックからポップ、バラード、そしてファンクやディスコに至るまで、さまざまなスタイルの楽曲を含んでいます。

    Jazzには、大ぼらを吹く、くだらない話をする、活気づける、にぎやかにする、華やかにする、たわ言、うそ八百、飾り付ける、多彩にするなどの意味もあるので、そういったニュアンスを含ませていると考えられます。

邦題:『ジャズ』

  • 直訳: 日本では、アルバムのタイトルは英語の「Jazz」と同様に「ジャズ」とされています。邦題においても、音楽ジャンルとしてのジャズよりも、クイーンの持つ音楽的自由と探求心を表現するタイトルとして理解されています。

アルバム『Jazz』のタイトルは、クイーンが音楽の可能性を探求し続ける姿勢を示しています。ジャンルに縛られることなく、さまざまな音楽的要素を取り入れ、聴き手に新たな音楽体験を提供するというバンドの意志が反映されていると言えるでしょう。

その結果、『Jazz』はクイーンのディスコグラフィーの中でも特に多様な音楽性を示すアルバムとなっています。

クイーン 7枚目のアルバム「Jazz (ジャズ)」解説のまとめ

クイーンの7作目となるオリジナルアルバム「Jazz(ジャズ)」は、バンドが音楽の枠を大胆に越え、そのクリエイティブな頂点を極めた瞬間を捉えています。1978年のリリース当時、ロック界に旋風を巻き起こしたこの作品は、クイーンの多面的な音楽性と実験精神の結晶です。

アルバムは、エキゾチックな「Mustapha」から始まり、ロックアンセム「We Will Rock You」の続編とも言える「Fat Bottomed Girls」、自由奔放な「Bicycle Race」、そして情熱的な「Don't Stop Me Now」と続きます。これらの楽曲は、聴く者にクイーンの音楽旅行へと連れて行ってくれます。各曲はバンドのジャンルにとらわれないアプローチを示し、ロック、ポップ、オペラ、そしてディスコさえも取り入れた豊かなサウンドスケープを展開します。

「Jazz」はその名が示すように、ジャズ音楽のアルバムではありませんが、ジャズが持つ即興性や自由な精神をロックの形で解釈し直した作品と言えるでしょう。アルバム全体を通じて、クイーンは従来の音楽の枠組みを超えて、まさに「ジャズ」のような自由な表現を追求しました。この点が、このアルバムが音楽史において重要な位置を占める理由の一つです。

また、「Jazz」アルバムは、クイーンの音楽的探求だけでなく、彼らが持つユーモアと遊び心、そして時には社会への洞察をも垣間見せています。これは、バンドが自身の音楽的ルーツに敬意を払いつつも、新しい地平へと挑戦し続けたことの証です。

結局のところ、「Jazz」はクイーンの創造性と冒険心が輝くアルバムであり、その時代を超えた魅力は今日もなお多くのリスナーを魅了し続けています。

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