レコードを持って集まった4人の若者たちが、リバプールの片隅で夢見た音楽革命――。
誰もが一度は口ずさんだ"Yesterday"、世界中で愛される"Let It Be"、実験精神に満ちた"A Day in the Life"。ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スターが紡ぎ出した旋律は、1960年代の社会現象を経て、現代の音楽シーンにも確かな足跡を残し続けている。
本記事では、ジャンルやムード別に厳選した21曲をご紹介。誰もが一度は耳にしたことのある名曲から、コアなファンも唸るような隠れた名曲まで、ビートルズの音楽的才能がぎっしり詰まった珠玉の楽曲の数々をお届けします!
ビートルズの代表曲
Hey Jude ~永遠に歌い継がれる7分間の奇跡
1968年8月のシングルリリース以来、ビートルズ最大のヒット曲として君臨し続ける「Hey Jude」。ポール・マッカートニーがジョンの息子ジュリアンを励ますために書いたこの曲は、当初「Hey Jules」というタイトルでした。
アルバム『The Beatles Anthology 3』に収録されたこの曲は、4分の優しいメロディに続く3分間の"Na Na Na"コーラスという異色の構成ながら、イギリスで9週連続1位、アメリカでは7週連続1位を記録。7分4秒という当時としては異例の長さにもかかわらず、誰もが口ずさめる親しみやすさと盛り上がりの秀逸さで冗長さを一切感じさせません!
レコーディング時、ポールが即興で歌い始めた"The movement you need is on your shoulder"というフレーズを消そうとした際、ジョンが「それが最高の歌詞だ」と主張して残したというエピソードも有名です。現在でも結婚式や大規模イベントでよく使用され、「みんなで歌いたくなる究極のシンガロング」としても高い評価を得ています。
Let It Be ~希望を運ぶ最後のメッセージ
1970年3月発売、同名アルバムのリード曲として世に送り出された「Let It Be」。解散直前の混沌とした時期に、亡き母メアリーが夢枕に立ち「すべてをあるがままに(Let It Be)」と告げたというポールの実体験から生まれました。
グラミー賞にもノミネートされたこの曲は、ビリー・プレストンのエレクトリックピアノとジョージ・ハリスンの歌メロ並みに説得力のあるギターソロが楽曲の魅力を引き立てています。シンプルながら深い祈りの要素を含んだメロディは、多くの人々の心の支えとなり、特に困難な時期に聴きたくなる名曲!
Yesterday ~最も多くカバーされた名曲
1965年のアルバム『Help!』に収録された「Yesterday」は、ギネス世界記録に「最も多くカバーされたポップス曲」として認定されています(なんと3000以上のカバーバージョンが存在!!)。
ポール・マッカートニーが夢の中でメロディを思いつき、しばらくの間「Scrambled Eggs(スクランブルエッグ)」という仮タイトルで呼んでいたというユニークな誕生秘話を持つ楽曲です。ビートルズとしては異例の、ポール一人とストリングスだけのシンプルなアレンジながら、そこが逆に切ない歌詞と美しい旋律をグッと引き立てていますよね。
Come Together ~4人の個性が融合した傑作
1969年発表の『Abbey Road』のオープニングを飾る「Come Together」は、ジョンのホップなボーカル、ポールのうねり感が気持ち良いベースライン、リンゴのプッシュ強めなドラミング、そしてジョージの空間を支配するギターワークが見事に調和した1曲です。
当初はティモシー・リアリーのキャンペーンソングとして書かれましたが、チャック・ベリーの「You Can't Catch Me」との類似性を指摘され、訴訟問題に発展するという波乱の歴史も持っています。独特な歌詞の解釈をめぐって今でも議論が続いており、「4人のメンバーそれぞれを表現している」という解釈が有力。
Help! ~バンドの転換点となった叫び
1965年に映画の主題歌として発表された「Help!」は、まさにジョン・レノンの魂の叫びでした。当時の彼の精神状態や内面の苦悩を率直に表現した歌詞は、ハッピーなメロディとの対比が印象的です。
アルバム『Help!』の表題曲として知られるこの曲は、全米・全英チャートで1位を獲得。ビートルズが単なるポップバンドから、より深い表現を追求するアーティストへと進化するターニングポイントとなった楽曲として音楽史に名を残しています。
「開運! なんでも鑑定団」のオープニングソングとしても使用されているので、我々日本人にとっても馴染み深い一曲ですね♪
All You Need Is Love ~愛の普遍性を歌った世界的アンセム
1967年6月、史上初の全世界同時衛星放送「Our World」で初披露された「All You Need Is Love」は、まさに60年代の平和と愛の精神を表したしたナンバーです。
変拍子を含む特徴的なリズムと、「ラ・マルセイエーズ」や「グリーンスリーブス」などの引用を織り交ぜた編曲の妙が光る本作は、発表後すぐに全英1位、全米1位を記録。現代でも平和や愛を訴える場面で頻繁に使用され、その普遍的なメッセージは色褪せることを知りません。
レコーディング時のスタジオには、ローリング・ストーンズのミック・ジャガーやキース・リチャーズなど、当時の英国ロック界の錚々たるメンバーが集結し、コーラスに参加したことでも知られています。
キャッチーなナンバー
I Want to Hold Your Hand ~世界を虜にしたブレイクスルー
1963年11月リリースのシングル曲として発表された「I Want to Hold Your Hand」は、ビートルズのアメリカ進出を決定づけた記念碑的な1曲です。ジョンとポールがジェーン・アッシャーの家の地下室にあったピアノで作曲したこの曲は、アメリカのビルボードチャートで7週連続1位を記録。「ブリティッシュ・インベージョン」の先駆けとなりました。
それまでのロックンロールには無かった革新的なコード進行と、"I want to hold your hand"というシンプルながら印象的なフレーズの繰り返し。当時のアメリカの若者たちは、このフレッシュな響きに熱狂し、後の「ビートルマニア」現象の火付け役となったのです。
Eight Days a Week ~陽気なリズムが特徴的な人気曲
1964年のアルバム『Beatles For Sale』に収録された「Eight Days a Week」は、ポールのドライバーが「一週間フル稼働で働いている」と表現した「eight days a week」というフレーズからインスピレーションを得て制作されました。大袈裟ではなく、本当にそれだけ忙しかったのでしょう(笑)
特徴的なフェードインという開始方法や、リンゴの安定したドラミング、ジョージの12弦ギターの輝かしい音色が絶妙なハーモニーを生み出しています。アメリカでシングルカットされた際には2週連続1位を獲得し、現在でも海外のラジオ等で頻繁に聴くことができる人気曲となっています。
Can't Buy Me Love ~お金では買えない純粋な愛を歌う
1964年3月リリース、映画『A Hard Day's Night』のサウンドトラックにも収録された「Can't Buy Me Love」は、パリでのレコーディング中に生まれました。物質主義への皮肉を込めた歌詞と、軽快なリズム&ブルースのビートが見事にハマってますね!
全米・全英チャートで1位を獲得したこの曲は、ポールの力強いボーカルとジョージのロカビリー的で粋なギターソロが光る。そして、特に"Can't buy me love, everybody tells me so"というフレーズは、今でもドキッとさせられます。
Hello, Goodbye ~シンプルな対比が生む魅力
1967年11月発売のシングル曲「Hello, Goodbye」は、対極的な言葉を組み合わせるという実験的な試みから生まれました。ポールがビートルズのマネージャー、アレン・クラインの秘書と即興で言葉遊びをしている中でアイデアが生まれたというエピソードを持ちます。
「hello」と「goodbye」、「yes」と「no」、「stop」と「go」という単純な対比の繰り返しながら、ゾクゾクさせる転調やサビの凝ったコーラスワークなど、音楽的な充実度も高く、全英で7週連続1位を記録しました。
Penny Lane ~郷愁を誘う優美なメロディ
1967年2月にリリースされた「Penny Lane」は、ポールの故郷リバプールにある通りの名前から取られています。当時最先端だったピッコロ・トランペットの使用や、細部まで作り込まれた詩的な歌詞は、彼らの音楽性の深化を示す好例のひとつ♪
「Strawberry Fields Forever」とのダブルAサイドシングルとして発売され、全英2位を記録。リバプールの日常風景を生き生きと描写した歌詞と、明るく華やかなメロディの組み合わせは「心が晴れやかになる曲」の代表格でしょう。デイビット・メイソンによる印象的なピッコロ・トランペットのソロは、クラシカルな要素をポップスに取り入れた革新的な試みとして、音楽史にとっても大きな意味を持ちます。
バラードの名曲
The Long and Winding Road ~別れを告げる感動のラストバラード
1970年、最後のアルバム『Let It Be』に収録された「The Long and Winding Road」は、バンドの解散を予感させるような物悲しさを帯びた名曲です。スコットランドのハイランド地方を運転中にインスピレーションを得たというポールの美しいピアノバラードは、プロデューサーのフィル・スペクターによる壮大なオーケストレーションとクワイアが加えられ、より劇的な仕上がりとなりました。
この楽曲は、アメリカでビートルズ最後の1位シングルとなり、まさに彼らの輝かしい歴史に相応しいフィナーレを飾りました。後年、ポールは過剰なオーケストラアレンジへの不満を表明し、2003年の『Let It Be… Naked』ではよりシンプルなバージョンを発表しています。
In My Life ~人生を振り返る珠玉の名曲
1965年のアルバム『Rubber Soul』に収録された「In My Life」は、ジョン・レノンが26歳という若さで書いた、人生への深い洞察に満ちた傑作です。リバプールでの少年時代の思い出を綴ろうとして生まれたこの曲は、やがて普遍的な人生讃歌へと昇華されました。
ジョージ・マーティンによるバロック調のピアノソロ(実際は倍速で録音したものを通常速度で再生)や、情感豊かなコーラスワークが特徴的です。『ローリングストーン』誌が選ぶ「史上最も偉大な500曲」で23位にランクインするなど、その芸術性は高く評価されています。
コード進行としても、要所要所で「サブドミナントマイナーコード」が効果的に使用されており、独特の哀愁感を醸し出しているところがミソです♪
And I Love Her ~静かに心に染み入る愛の告白
1964年の映画『A Hard Day's Night』のサウンドトラックに収録された「And I Love Her」は、ポールの繊細な感性が光る美しいラブソングです。アコースティックギターとボンゴの組み合わせという斬新なアレンジと、"I know this love of mine will never die"という感情丸出しのフレーズが、多くの人々の心を捉えました。
ジョージ・ハリスンのクラシカルギターソロが楽曲の雰囲気を格調高いものにしており、後にカート・コバーンも絶賛したことで知られています。
Something ~ジョージ・ハリスンが贈る最高の愛の歌
1969年のアルバム『Abbey Road』に収録された「Something」は、ジョージ・ハリスンの作曲家としての才能が開花した傑作!
当時の妻パティ・ボイドへの思いを込めて書かれたこの曲は、フランク・シナトラに「この30年で書かれた最高のラブソング」と称賛されました。
ジョージ節全開のギターイントロから始まり、甘美なメロディラインと情感溢れる歌詞が絶妙にマッチした本作は、ジョージの楽曲として初めてA面シングルに選ばれ、全米シングルチャートで1位を獲得。ビートルズの楽曲の中でも特に多くのアーティストにカバーされています。
While My Guitar Gently Weeps ~ギターが奏でる切ない調べ
1968年の『ホワイト・アルバム』に収録された「While My Guitar Gently Weeps」は、エリック・クラプトンをゲストギタリストに迎えて制作された伝説的な1曲です。中国の古書『道徳経』からインスピレーションを得たというジョージが、人々の無関心さへの悲しみを歌った本作は、激しめのビブラートが泣かせるクラプトンのギターソロと相まって、深い精神性を持つ傑作に仕上がりました。
制作時、他のメンバーの関心を引くため、親友のクラプトンを招いてレコーディングしたというエピソードも有名です。2004年にはジョージの追悼コンサートで、息子のダニーとクラプトンが共演し、感動的な演奏を披露!
ロックな楽曲
Revolution ~社会への問いかけを込めた強烈なロック
1968年8月、「Hey Jude」のB面としてリリースされた「Revolution」は、当時の反戦運動や学生運動への複雑な思いを込めたジョン・レノンの力作です。ファジーに歪んだギターサウンドと荒々しいボーカルが特徴的で、後のパンクロックにも大きな影響を与えました。
同曲には2つのバージョンが存在し、アルバム『The Beatles』(通称:ホワイト・アルバム)に収録されたスローバージョン「Revolution 1」と、シングルカットされたハードロックバージョンがあります。特にシングルバージョンの歪んだギターサウンドは、エンジニアのジェフ・エメリックが、アンプを限界まで歪ませて録音することで実現。当時としては革新的なサウンドプロダクションとしてインパクトを残しています。
Back in the U.S.S.R. ~アメリカンロックへのオマージュ
1968年の『ホワイト・アルバム』の開幕を飾る「Back in the U.S.S.R.」は、ビーチ・ボーイズの「California Girls」とチャック・ベリーの「Back in the U.S.A.」へのオマージュとして作られました。冷戦時代のソビエト連邦を舞台に、アメリカンロックの定番テーマを逆転させた遊び心のある歌詞と、ジェット機の音から始まるダイナミックなイントロが強烈です。
実はこの曲のドラムは、一時的にバンドを離脱していたリンゴの代わりに、ポールが叩いています。他のメンバーも様々なパートを担当し、4人の優れたミュージシャンシップが遺憾なく発揮された1曲となりました。
ビートルズ史上、最もドライブ感のある楽曲かも!
Get Back ~原点回帰を果たしたパワフルナンバー
1969年4月にシングルとして発売された「Get Back」は、複雑化していた音楽性をロックンロールの原点に立ち返らせた力強いナンバーです。ビリー・プレストンをゲストキーボーディストに迎え、ライブ感覚で録音されたこの曲は、全米・全英でナンバーワンを獲得。後の『Let It Be』アルバムにも収録されました。
有名なルーフトップコンサートでのラストナンバーとしても知られ、"Get back to where you once belonged"(原点に帰れ)という歌詞は、バンドの状況を象徴するメッセージとしても解釈されています。
Day Tripper ~印象的なリフが特徴の硬質なロック
1965年12月発売の「Day Tripper」は、ジョンとポールが共作した強烈なギターリフがあまりにも有名なロック曲です。「We Can Work It Out」とのダブルAサイドシングルとして発表され、全英1位を記録しました。
当時のLSDカルチャーを皮肉った歌詞内容と、繰り返し印象付けられるリフの組み合わせは、後のハードロック史に大きな影響を与えました。特にイントロのギターリフは、ロック史に残る名フレーズとして多くのギタリストに影響を与えています。
Helter Skelter ~ヘヴィメタルの先駆けとなった衝撃作
1968年の『ホワイト・アルバム』に収録された「Helter Skelter」は、ザ・フーの「I Can See for Miles」に触発されてポールが作曲した、ビートルズ史上最もヘヴィな楽曲です。当時としては前例のない重厚なサウンドと激しいボーカル、そして混沌としたアレンジは、後のヘヴィメタルの先駆けとしても重要な意味を持つナンバー!
レコーディング時には18分を超えるテイクも録音され、リンゴは激しいドラミングの末に「I've got blisters on my fingers!」(指に豆ができた!)と叫んでいます。この叫び声は曲の最後に収録され、ロック史に残る名シーンとなりました。多くのヘヴィメタルバンドがこの曲をカバーし、その影響力の大きさを証明しています。
ビートルズの名曲紹介:まとめ
4人の青年が、リバプールの寒い路地裏で夢見た音楽が、今や人類の宝物となっている――。
1962年のデビューから1970年の解散までの、たった数年間の活動期間だったにもかかわらず、ビートルズが紡ぎ出した音楽はポピュラーミュージックの水準をかつてない規模で大きく引き上げました。もちろん、本記事で紹介した21曲は、その壮大な名曲群のごく一部に過ぎません。
彼らの音楽は、まるで万華鏡のように、見る角度によって異なる表情を見せます。10代の頃に聴いた時とは違う魅力が30代で見つかり、50代になってさらに新しい発見がある――。それは彼らの楽曲が、哲学やスピリチュアリズムにも通じる深い芸術性を持っているからでしょう。
「音楽で世界を変えることができる」
若き日のジョンとポールが、打ち捨てられたパブの片隅で交わした約束は、確かに実現されました。
本記事で紹介した21曲が、あなたのビートルズ体験の扉を開く鍵となれば幸いです。そして、これらの曲があなたの人生に、新しい輝きと感動をもたらしてくれることを心から願っています。
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