深夜のテレビから流れてきた "Billie Jean" のイントロ。思わず体が動き出す、あの魔法のようなグルーヴ感。世界中の人々を魅了し続けてきたマイケル・ジャクソンは、ポップスターを超えた20世紀最大の音楽的イノベーターでした。
1982年発売の『スリラー』は1億枚を超える驚異的なセールスを記録。しかし、それは彼の偉大さを語る一つの指標に過ぎません。黒人音楽のルーツを大切にしながら、ロック、ソウル、ディスコ、そしてヒップホップまで、あらゆるジャンルを独自の感性で昇華させ、ポップミュージックの定義を一新させたのです!
人種や世代、国境を超えて愛される彼の楽曲群。壮大なスケール感を持つアンセムから、心に染み入るバラード、そして魂を揺さぶるダンスナンバーまで。今回は、“キング・オブ・ポップ” マイケル・ジャクソンが遺した数々の名曲から、珠玉の18曲をタイプ別にセレクトしてお届けします。
マイケル・ジャクソンの代表曲
マイケル・ジャクソンの代表曲と言えば、まさにこの4曲。いずれも音楽史に大きな足跡を残した名曲ばかりです!
Thriller
1982年、アルバム『Thriller』からのリリース。ホラー映画のような不気味なナレーションで始まり、ゾンビダンスで魅せる14分の大作MVは、いまだにYouTubeで年間1億回以上の再生を記録しています。
ロックギターの重厚なサウンドと、マイケルの妖艶なボーカルが絡み合う楽曲は、プロデューサーのクインシー・ジョーンズの力量が存分に発揮された傑作。当時のMTV(音楽専門チャンネル)では、史上初めて黒人アーティストの楽曲として大々的に放送され、人種の壁を打ち破った記念碑的な1曲としても知られています。ゾンビダンスは、子供の頃トラウマになるくらい怖かった(笑)という強烈なインパクトを残した楽曲です。
Billie Jean
1983年発表の大ヒット曲。同じく『Thriller』アルバムに収録され、全米チャート7週連続1位を記録。あのムーンウォークを初めて披露したのが、この曲のパフォーマンスでした。
執拗に繰り返されるベースラインと、誰かに追い掛けられているような緊迫感のあるリズムは、ストーカー被害を受けた実体験がモチーフになっているといわれています。「But the kid is not my son(でも、その子は私の子供じゃない)」というフレーズは、30年以上経った今でも世界中で歌い継がれています。もちろん、ライブではスタジアム全体が踊り出す定番曲となっていました。
Beat It
同じく1983年リリース。ハードロック界の巨匠エディ・ヴァン・ヘイレンをフィーチャーした異色のコラボレーションは、当時のロック界に衝撃を与えました。ストリートギャングの抗争をテーマにした歌詞と、激しいギターリフの組み合わせは、ロックとR&Bの融合という新しいジャンルを確立。
実はギターソロの録音時、スタジオのモニタースピーカーから煙が出るほどの大音量だったというエピソードも!グラミー賞「年間最優秀レコード賞」を受賞し、MTV Heavy Rotationチャートでも記録的な再生回数を記録しています。ロックファンを虜にしたマイケルの代表作!
Man in the Mirror
1988年、アルバム『Bad』からのシングルカット。社会派の歌詞と壮大なゴスペルコーラスが特徴的な一曲で、作詞には『I Just Can't Stop Loving You』でデュエットを組んだサイーダ・ギャレットが参加。
「変化は自分自身から始めよう」というメッセージは、現代にも通じる普遍的な力を持っています。2009年のマイケルの追悼式では、遺影とともにこの曲が流れ、会場全体が涙に包まれたことは、多くのファンの記憶に残っています。チャート実績は全米2週連続1位。「人生の岐路に立つたびに聴きたくなる」「この曲を聴いて人生が変わった」という声も多く、80年代のキラキラしたサウンドが逆に若年層にとって新鮮に刺さる一曲。
バラードの名曲
マイケルの優れたダンススキルに目が行きがちですが、彼のバラードは深い人間愛と類まれな歌唱力が結実した珠玉の名曲揃い!
You Are Not Alone
1995年、アルバム『HIStory』からのリリース。R.ケリーが作詞作曲を手がけた本作は、ビルボードチャートで初登場1位を獲得した史上初の快挙を成し遂げます。MVでは当時の妻リサ・マリー・プレスリーとの親密なシーンも話題に。
深い悲しみを抱える人々に寄り添うような温かなメロディと、マイケル特有の繊細なファルセットが胸を打ちます。人生で一番辛い時期を、この曲が救ってくれそうな、処方箋的なバラードナンバーです♪
Earth Song
1995年、同じく『HIStory』からの収録曲。環境破壊や戦争、貧困など、地球が抱える問題に真正面から向き合った意欲作。制作には実に7年の歳月を要し、壮大なオーケストラアレンジと圧倒的な歌唱力で描き出す6分超の大作に仕上がりました。
全英1位を獲得し、特にヨーロッパで大きな反響を呼んだ本作。最後のサビで鳥肌が立たない人はいないのでは!?環境問題への意識が高まる現代、改めて注目を集めている楽曲です。
Heal the World
1992年、アルバム『Dangerous』収録の感動的なバラード。
マイケルが最も気に入っていた自作曲の一つと公言していました。子供たちの合唱を効果的に取り入れた楽曲は、世界平和への祈りを込めて作られ、同名の慈善団体も設立。「We Are The World」と並んで彼の人道的活動を象徴する楽曲となっています。制作時、完璧な仕上がりを求めるマイケルは、子供たちのコーラスだけで100回以上のテイクを重ねたというエピソードも。世代を超えて歌い継がれる平和の賛歌となっています。
かっこいい曲
ダンサブルでありながらも、メッセージ性と音楽性を極限まで高めた楽曲の数々。マイケルのアーティストとしてのロックな側面が発揮された4曲をご紹介します。
Smooth Criminal
1987年、アルバム『Bad』収録。タイトなサウンドの異色作。ギャング映画を思わせるノワール調のストーリー性と、45度に傾く「アンチグラビティ・リーン」というマイケル独自のダンスムーブで、世界中を驚愕させました。
「Annie, are you OK?」という印象的なフレーズは、マイケルが応急救護講習で使用されていたマネキン人形の名前から着想を得たという意外なエピソードも。制作時には、完璧な振付を追求するあまり、ダンサーたちと合わせて150回以上のリハーサルを重ねたといいます。「この曲のMVを見て、ダンサーを目指した」というプロダンサーも多く、現在でもダンス界に多大な影響を与え続けています。
Bad
1987年、同名アルバムのタイトル曲。マーティン・スコセッシ監督が手がけた18分にも及ぶミュージックビデオは、西側劇映画さながらの作品性で話題を呼びました。当初、プリンスとのデュエット曲として構想されていたという裏話も。
シャープなシンセサイザーサウンドとタイトなリズムトラックの組み合わせは、80年代後半のポップミュージックの方向性を決定づけたと評価されています。「バッド=かっこいい」という言葉の使い方が広まったのも、この曲の影響だとか。全米1位を含む世界9カ国でチャート首位を獲得した不動の名曲です。
They Don't Care About Us
1996年、アルバム『HIStory』からのリリース。人種差別や社会的抑圧に対する怒りを、ストレートかつパワフルに表現した意欲作。スパイク・リー監督が手がけたブラジルのファベーラでのMVと、刑務所を舞台にしたバージョンの2つが制作され、それぞれ社会問題を鋭く提起しました。
物議を醸した歌詞の一部を変更する騒動もありましたが、それも含めて大きな話題に。「マイケルの社会派の代表作」と評される本作は、現代のBLM運動でも度々引用され、そのテーマ性は人々の心に強く訴えかけています。
Black or White
1991年、アルバム『Dangerous』の先行シングル。人種や文化の壁を超えた調和のメッセージを、キャッチーなロックサウンドに乗せて表現した意欲作。
MVでは当時最新のモーフィング技術を駆使し、様々な人種の顔が次々と変化していくシーンが話題を呼びました。ハードロック界の重鎮スラッシュ(ガンズ・アンド・ローゼズ)がギターで参加!「人種差別について子供と話し合うきっかけになった」という声も多く、全米1位含む28カ国でチャート首位を獲得。マイケルの代表的なメッセージソングとして、今なお色褪せない輝きを放っています。
ダンスナンバー
グルーヴ感とメロディの完璧なバランス、そして誰もが思わず体を動かしたくなるリズム。ダンスミュージックの新境地を切り開いた4曲をご紹介します。
Don't Stop 'Til You Get Enough
1979年、アルバム『Off the Wall』からの先行シングル。マイケル初の自主制作曲であり、これまでのジャクソン5時代のイメージを一新した記念碑的作品。
シャウトで始まる印象的なイントロから、ストリングスとホーンセクションが絡み合う贅沢なディスコサウンドは、当時のダンスミュージックの最高峰として評価されました。「シャワー中にメロディが降りてきた」というエピソードも有名で、グラミー賞最優秀R&B vocal performance賞を受賞。全米1位を獲得し、マイケルのソロアーティストとしての地位を確立した1曲です。「このイントロだけでフロアが沸く」とDJたちの間で語り継がれる不朽の名作!
Rock with You
1979年、同じく『Off the Wall』からの2ndシングル。ロッド・テンパートンによって書かれた本作は、当初は別アーティスト向けだった楽曲を、プロデューサーのクインシー・ジョーンズが直感的にマイケルに推薦。
スムースなミディアムテンポと洗練されたコード進行は、ディスコ全盛期に新しいR&Bの方向性を示しました。全米4週連続1位を記録し、ビルボードYear-Endチャートでも上位にランクイン。どこまでもロマンティックでスイートな、恋人と踊りたいダンスナンバー!
The Way You Make Me Feel
1987年、アルバム『Bad』からのリリース。軽快なブルース調のベースラインと、ストリート感あふれるリズムトラックが特徴的な一曲。
MVでは、路上でダンスを交えながら女性に猛アプローチするマイケルの姿が印象的で、彼のダンススキルとコミカルな演技力が存分に発揮されています。実はこの曲、母親のキャサリンが「アルバムにアップテンポな曲が足りない」と指摘したことがきっかけで制作されたという裏話も。全米1位を含む欧州各国でもチャート上位を記録。
Remember the Time
1992年、アルバム『Dangerous』収録曲。ニュージャックスイングを取り入れた革新的でグルーヴィーなサウンドと、古代エジプトを舞台にした豪華MVで注目を集めました。
エディ・マーフィー、イマン、マジック・ジョンソンら豪華キャストを起用したMVの制作費は200万ドルを超え、当時のミュージックビデオとしては最高額を記録。ジョン・シングルトン監督の手腕により、ダンスと物語が見事に調和した作品となっています。R&Bシングルチャートで1位を獲得し、特にヒップホップファンからの支持も高い1曲。90年代R&Bの金字塔サウンドです♪
コラボ曲
Say Say Say(with Paul McCartney)
1983年、ポール・マッカートニーのアルバム『Pipes of Peace』からのリリース。ビートルズの伝説的メンバーと、キング・オブ・ポップが夢の共演を果たした歴史的作品。
二人の溌剌とした掛け合いと、キャッチーなメロディラインは、当時のポップミュージックの頂点と評されました。実は録音前、マイケルはポールの自宅で2週間ほど滞在し、楽曲制作に没頭したというエピソードも。全米6週連続1位を記録し、1983年の年間シングルチャートでも1位を獲得。「ロック界の重鎮と新世代の王者の夢の競演」として、音楽史に大きな足跡を残しています。
Scream(with Janet Jackson)
1995年、アルバム『HIStory』からのリリース。実の妹ジャネット・ジャクソンとの初の本格的デュエット作品。メディアの執拗な追及や誹謗中傷への怒りを、未来的なエレクトロサウンドに乗せて表現した意欲作。
宇宙ステーションを舞台にした白黒のSF風MVは制作費700万ドルをかけ、ギネス世界記録に認定される話題作となりました。兄妹の見事な歌とダンスの掛け合いは、まさに必見。デビュー週の最高位記録を打ち立て、グラミー賞「最優秀ミュージックビデオ賞」も受賞。曲のあちこちに、怒りのエネルギーがほとばしっていますね(笑)
I Just Can't Stop Loving You(with Siedah Garrett)
1987年、アルバム『Bad』からの先行シングル。バックコーラスとして活躍していたサイーダ・ギャレットを抜擢した珠玉のラブバラード。
実はホイットニー・ヒューストンやバーブラ・ストライサンドにもオファーが出ていたものの、最終的に新人歌手だったシーダを選んだというエピソードも。二人の繊細な歌声が織りなす優美なハーモニーは、多くの人々の心を魅了しました。全米・全英を含む世界各国でチャート1位を獲得し、シーダは後に『Man in the Mirror』の作詞も手がけ、マイケルの信頼するコラボレーターとなりました。
マイケル・ジャクソンの名曲ベスト18:まとめ
キング・オブ・ポップの真価は、その圧倒的な多様性にあります。
壮大なスケールの代表曲から、社会派メッセージを込めたかっこいい曲、心に染み入るバラード、そして誰もが踊りたくなるダンスナンバーまで。さらに、ポール・マッカートニーやジャネット・ジャクソンとのコラボレーションでは、異なるジャンルとの化学反応も見事に成功させました。
プロデューサーのクインシー・ジョーンズは「マイケルの偉大さは、あらゆる音楽の要素を完璧にマスターしていたことだ」と語っています。確かに、ボーカリストとしての類稀な歌唱力、作曲家としての卓越したメロディセンス、ダンサーとしての革新的なパフォーマンス。そのすべてが、ここでご紹介した名曲の中に結実しているのです。
2009年に急逝してから15年近くが経ちましたが、彼の音楽は今なお、世界中の人々に影響を与え続けています。マイケル・ジャクソンが遺した楽曲の数々は、間違いなく20世紀のポップミュージックの集大成であり、そして21世紀の音楽の道標となっているのです。
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