グラミー賞28冠、全世界で2億枚以上のレコードセールス、そして「クイーン・ビー」の愛称で親しまれるビヨンセ。
17歳でデスティニーズ・チャイルドのメインボーカルとしてデビューして以来、彼女は音楽という表現手段を通じて、人種や性別の壁を打ち破り、社会に新たな価値観を投げかけ続けてきました。R&B、ポップス、ヒップホップ、そしてアフリカンビーツまで様々な要素を取り入れながら、常にインパクトのあるサウンドを生み出し続けています。
そして、世界的なセールスの背後には完璧を追求するストイックな姿勢と、エンターテインメントへの純粋な愛がありました。そんな彼女の20年以上のキャリアから、クラブフロアを熱狂させるダンス曲〜ディーヴァの真価を見せつけるバラードまで、ビヨンセの人気曲をセレクトしてご紹介します!
ビヨンセの代表曲
「Crazy in Love」- feat. Jay-Z
2003年、デビューソロアルバム『Dangerously in Love』の幕開けを飾った歴史的な一曲。シカゴのチ・ライツの「Are You My Woman (Tell Me So)」のホーンセクションをサンプリングした印象的なイントロは、発売から20年以上経った今でも世界中のクラブシーンを支配し続けています。
当時交際中だったJay-Zとのコラボレーションも話題を呼び、Billboard Hot 100で8週連続1位を記録。グラミー賞では最優秀R&Bパフォーマンス賞を受賞しました。制作時、プロデューサーのRich Harrisonはこのホーンループを2年間温め続けており、「これはビヨンセしか歌えない」と確信していたそうです!
「Single Ladies (Put a Ring on It)」
2008年にリリースされた第3作『I Am… Sasha Fierce』からのリード曲。モノクロのミニマルな振付映像は瞬く間にソーシャルメディアで話題となり、数多くのパロディ動画を生み出しました。
プロポーズされないまま別れた元カレへの痛快なメッセージソングとして、多くの女性から共感を得た一方で、回転し続けるようなグルーヴパターンと中毒性のあるメロディは音楽的にも高い評価を受けました。「あなたが好きなら指輪をつけるべきでしょ?」というリリックは、現代のポップカルチャーに深く根付いています。
「Formation」
2016年、視覚的アルバム『Lemonade』のリード曲として突如リリース。黒人女性のアイデンティティとプライドを力強く表現した楽曲で、アメリカ南部のルイジアナ文化への誇りも込められています。
スーパーボウルのハーフタイムショーでの圧巻のパフォーマンスは大きな社会的反響を呼び、黒人の権利運動「Black Lives Matter」とも結びついて語られました。「I slay」(私は最強)という力強い宣言に、彼女が最も大切にしている自己肯定の大切さを乗せていますね。
「BREAK MY SOUL」
2022年、パンデミック後の希望を歌った『RENAISSANCE』のファーストシングル。90年代のハウスミュージックにインスパイアされた楽曲は、「Great Resignation」(大量離職)の時代における労働者の解放と自由を歌い上げ、新たな時代のアンセムとなりました。
Robin S.の「Show Me Love」をサンプリングした90'sハウスサウンドは、ダンスミュージックの歴史への敬意も込められています。
「Run the World (Girls)」
2011年発売のアルバム『4』からのシングル。Major Lazerの「Pon de Floor」のサンプリングをベースに、女性のエンパワーメントを力強く歌い上げた楽曲です。アフリカンなサウンドをバックにしたミリタリーテイストの衣装と息をのむようなダンスパフォーマンスは、ビヨンセの代名詞となっています。
「誰が世界を動かしているの? 女の子よ!」という力強いメッセージは、フェミニズムの文脈でも広く引用されています。制作時、ビヨンセは「若い女性たちに自信を持ってもらいたい」という強い思いを込めたと語っています。
盛り上がる!ダンスナンバー
「Naughty Girl」
2003年発売のソロデビューアルバム『Dangerously in Love』に収録された、中東風のエキゾチックなサウンドが印象的な一曲。ドナ・サマーの「Love to Love You Baby」からインスピレーションを得た官能的なメロディと、ビヨンセ特有のセンシュアルなボーカルが見事に調和しています。
ミュージックビデオでは、『キャバレー』を彷彿とさせるシャンパングラスのシーンが話題を呼び、その年のMTVビデオ・ミュージック・アワードでも高い評価を受けました。
「Love on Top」
2011年のアルバム『4』からリリースされた、80年代のレトロソウルへのオマージュ作品。4回のキーチェンジを完璧にこなす圧巻のボーカルパフォーマンスは、ビヨンセの歌唱力を証明する代表作として語り継がれています。アレンジ面でもAORテイストな味付けも素晴らしい!
2011年のMTVビデオ・ミュージック・アワードでの妊娠発表パフォーマンスも記憶に新しく、ステージ後の「Baby, this is for you」という一言は、歴史的な名シーンとなりました。ウェディングパーティーでの定番曲としても人気が高く、「結婚式で絶対に流したい」というリクエストが絶えない一曲です。
「Check On It」
2005年、映画『ピンクパンサー』のサウンドトラックとして制作された楽曲。Slim Thugをフィーチャーしたテキサス色の強いサウンドは、ビヨンセの出身地ヒューストンへの想いが詰まっています。
ピンクを基調としたポップなミュージックビデオは、当時のBETで最も多く再生された映像の一つとなり、Billboard Hot 100でも5週連続1位を記録。「振付けが比較的簡単で真似やすい」と、ダンス初心者からも支持される人気曲♪
「Sweet Dreams」
2009年『I Am… Sasha Fierce』からのシングル。エレクトロポップとR&Bを融合させた斬新なサウンドスケープは、ビヨンセの新境地として音楽評論家からも高い評価を受けました。
「甘い夢も悪夢も全て受け入れる」という歌詞は、アーティストとしての覚悟を表現した深いメッセージとして解釈されています。未来的なロボットダンスを取り入れた独創的な振付けは、今でもダンスレッスンの定番として人気があります。
「Deja Vu」
2006年、第2作『B'Day』のリードシングルとして発表。夫Jay-Zとのコラボレーションで話題を呼んだこの曲は、70年代のファンクをモダンにアレンジした意欲作です。
ライブバンドによる横突き感が生々しいリズムセクションと、即興的な掛け合いが特徴的で、製作時にはバンドメンバー全員でスタジオに籠もり、グルーヴ感を追求したというエピソードも。「Crazy in Love」に続く恋愛ソングとして、カップルファンからの支持も厚い一曲となっています。
バラードの名曲
「Halo」
2008年『I Am… Sasha Fierce』からリリースされた珠玉のバラード。スウェーデンの天才プロデューサー、Ryan Tedderとの初タッグで生まれたこの曲は、ビヨンセの透明感のある歌声が最大限に活きています。
夫Jay-Zへの愛を綴ったとされる歌詞は、「真実の愛に出会えた喜び」を普遍的に表現し、世界中の人々の心を掴みました。グラミー賞最優秀女性ポップボーカルパフォーマンス賞を受賞し、Spotifyでは10億回以上の再生を記録。「私たちの愛の証」にふさわしい一曲。
「If I Were a Boy」
2008年、同じく『I Am… Sasha Fierce』からの衝撃作。BC Jeanによって書かれた楽曲をビヨンセが解釈し直し、ジェンダーの視点から恋愛と人生を描いた意欲的な作品です。
女性が男性の立場になることで見えてくる関係性の不平等を、繊細かつ力強く表現。プロデューサーのToby Gadは「レコーディング時、ビヨンセは涙を流しながら歌っていた」と証言しており、その感情の深さは聴く者の心を打ちます。ミュージックビデオでは警察官役を演じ、その演技力も高く評価されました。
「Listen」
2006年、映画『ドリームガールズ』のサウンドトラックとして書き下ろされた楽曲。ビヨンセ自身が主演を務めた同映画で、重要なシーンを飾るこの曲は、アカデミー賞歌曲賞にノミネートされ、ゴールデングローブ賞では受賞を果たしました。
「自分の声を聴いて」という切実な願いを込めた歌詞と、圧巻のボーカルレンジは、多くのオーディション番組でも課題曲として取り上げられています。制作時、ビヨンセは「全ての人に届けたいメッセージがある」と語り、魂を込めて歌い上げました。楽曲アレンジ面でも、ビヨンセの楽曲史上、最も調性感を広く取ったコードアレンジ!
「1+1」
2011年のアルバム『4』に収録された、素直な愛の讃歌。シンプルなギターアルペジオから始まり、徐々に感情が高まっていく構成は、プリンスの影響を強く感じさせる名曲です。
「1足す1は2」という数学的な真実のように、揺るぎない愛を表現した歌詞は、その率直さゆえに多くの人々の心を打ちました。テレビ番組「American Idol」での圧巻のライブパフォーマンスは伝説となっています。
フューチャリング・コラボソング
「Telephone」- with Lady Gaga
2009年、ポップミュージック界の二大ディーヴァが遂に実現させた夢の共演。Lady Gagaの『The Fame Monster』に収録されたこの曲は、当初ブリトニー・スピアーズに提供される予定でしたが、最終的にビヨンセとのコラボレーションが実現。
9分超の犯罪映画さながらのミュージックビデオは、クエンティン・タランティーノへのオマージュとして話題を呼び、YouTubeで10億回以上の再生を記録しました。「ポップミュージック史に残る伝説的なコラボ」のひとつ。
「Beautiful Liar」- with Shakira
2006年、『B'Day』のデラックスエディションに収録された、ラテン色豊かなミッドテンポナンバー。同じ男性に恋をした二人の女性が、男性ではなく友情を選ぶという斬新なストーリー性が話題を呼びました。
ビヨンセとシャキーラによるダンスシーンは完全なシンクロを実現し、振付けの難易度の高さから「プロのダンサーでも真似するのが難しい」と言われています。スペイン語版も同時リリースされ、ラテン市場でも大きな成功を収めました。
「Perfect Duet」- with Ed Sheeran
2017年、Ed Sheeranの大ヒット曲「Perfect」のデュエットバージョン。アコースティックな温かみのあるサウンドに、ビヨンセの繊細なボーカルが重なり、オリジナルとは異なる魅力を引き出しています。
クリスマスシーズンのリリースということもあり、「最高のクリスマスプレゼント」とファンから歓喜の声が上がりました。レコーディングは一発取りで完了したという逸話も残されており、二人のプロフェッショナリズムを物語っています。
「Mi Gente」- with J Balvin & Willy William
2017年、ラテン音楽シーンで大ヒットしていた楽曲のリミックスバージョン。ハリケーン被害を受けたプエルトリコやその他のカリブ海地域への支援を目的に制作され、売上の全額が寄付されました。
英語とスペイン語を織り交ぜたビヨンセのボーカルは、グローバルな音楽の可能性を広げた先駆的な試みとして評価されています。本楽曲をきっかけに、メインストリームのポップミュージックとラテン音楽の融合が加速したとも言われています。
アイコンを超えて、伝説となったディーヴァ。ビヨンセ
刻一刻と変化する音楽シーンの中で、唯一無二の存在感を放ち続けるビヨンセ。17歳でデスティニーズ・チャイルドのメインボーカルとしてデビューしてから四半世紀、彼女は常に音楽の可能性を広げ、文化の境界線を押し広げ続けてきました。
本記事で紹介した人気曲18選はそれぞれその時々の社会の空気を切り取りながら、丁寧さと大胆さを両立させて創り上げられています。ダンスフロアを熱狂させる圧巻のグルーヴ、歌姫の本領を発揮するバラード、そしてジャンルを超えたコラボレーションを通じて、常にフロンティア精神を絶やしませんでした。
2024年、ビヨンセは新たな挑戦の途上にいます。カントリーミュージックへの進出を果たした『COWBOY CARTER』は、またしても音楽シーンに新しい風を吹き込みました。彼女の創造性は、まるで尽きることを知らない泉のように、今なお新鮮な輝きを放っているのです。
20世紀にマイケル・ジャクソンが果たしたように、21世紀のポップミュージックを定義づけたアーティスト—それがビヨンセです。彼女の足跡は、単なる成功ストーリーを超えた伝説として、音楽史に永遠に刻まれることでしょう。そして私たちは、その歴史的瞬間をリアルタイムで目撃する幸運な証人なのかもしれません。
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