世界的スターとなったThe Policeを解散後、誰もが予想しなかった道を選んだ。ジャズ・ミュージシャンを従えてのソロ・デビュー。
それ以来、スティングは音楽の辺境を探求し続けているスティング。クラシカルなルーツ・ミュージック、北アフリカの伝統音楽、アラビアンな響き、そして現代のエレクトロニカまで。あらゆる音楽を己のフィルターを通して昇華させ、唯一無二の表現へと昇華させてきた。
類い稀なバリトンボイスと、文学的な歌詞世界。実験性と大衆性という、相反する要素の絶妙なバランス感覚。それらが織りなす音楽は、40年以上の時を経た今なお、世界中のリスナーの心を掴んで離さない。まさに"生ける伝説"と呼ぶにふさわしい、現代音楽界の巨人である。
そして、1億枚を超える総アルバムセールスを誇る彼の作品群。「どのアルバムから聴き始めれば良いのだろう?」そんな声も多いはず。今回は、スティングの音楽への入り口となる名盤TOP5と、初心者にぴったりなベストアルバムを厳選してご紹介します。
スティングの名盤TOP5
Nothing Like the Sun - シェイクスピアに捧げた野心作
スティングの音楽的成熟を決定付けた1987年リリースの名盤。シェイクスピアのソネット130番から着想を得たタイトルが示す通り、詩的な歌詞と洗練された音楽性が融合した意欲作です。
ジャズの巨匠ブランフォード・マルサリスとの共演で生まれた『Englishman in New York』(アルバム収録曲)は、ニューヨークに暮らすイギリス人という自身の経験を昇華させた名曲。南米音楽の影響を受けた『They Dance Alone』では、チリの人権問題に光を当て、音楽家としての社会的責任も果たしています。
グラミー賞2部門ノミネート、世界累計売上800万枚を記録。
Ten Summoner's Tales - 物語る音楽家の真骨頂
1993年、スティングの本名(Gordon Sumner)にちなんだタイトルを持つ本作は、チョーサーの『カンタベリー物語』から着想を得た、まさに"物語"のアルバム。
『Fields of Gold』は牧歌的な風景を描いた永遠の名曲として、今なお多くのアーティストにカバーされ続けています。数学的な美しさを持つ『Shape of My Heart』は、映画『レオン』の印象的なエンディングでも使用され、新たなファン層の獲得にも成功!
グラミー賞3部門受賞という快挙を達成し、間違いなく彼の「キャリア最高傑作の一つ」として神格化されている作品。
Dream of the Blue Turtles - ジャズメンとの挑戦的なソロ・デビュー
1985年、The Police解散後、誰もが予想しなかったジャズ路線でのソロ・デビュー。
ウェザー・リポートのケニー・カークランドやブランフォード・マルサリスといったジャズの実力者たちを従えての挑戦は、大きな話題を呼びました。
冷戦時代を反映した『Russians』、炭鉱労働者をテーマにした『We Work the Black Seam』など、社会性の高い楽曲群は、アーティストとしての新境地を開拓。当時、Rolling Stone誌は「大胆なキャリアの転換点」と絶賛しました。
The Soul Cages - 父への鎮魂歌
父親の死という個人的な喪失体験から生まれた1991年のアルバムは、深い精神性を帯びた作品となりました。
故郷ニューカッスルの造船所を舞台に、父と息子の物語を紡ぎ出しています。タイトル曲『The Soul Cages』は中世の民話からインスピレーションを得た壮大な叙事詩であり、『Mad About You』はビブリカルな愛の物語を現代に置き換えた傑作。
このアルバムでグラミー賞最優秀ロック・ソング賞を受賞し、音楽性の深化を印象付けました。また、印象派的なアプローチも多くみられる一枚です。
Brand New Day - 新世紀へ向けた革新的サウンド
1999年、20世紀最後のスタジオ・アルバムにして、最も商業的成功を収めた作品の一つ。
アルジェリアの歌手シャブ・マミとコラボレーションした『Desert Rose』は、大胆なクロスオーバーとして世界的ヒットを記録。
エレクトロニカやワールドミュージックを取り入れた先進的なサウンドスケープは、新世紀への期待を体現。グラミー賞2部門受賞、イギリスのQ誌では「最も野心的で成功したアルバム」と評されました。
スタイリッシュでシャープな味付けが多く、よりコンテンポラリーな作風期へ進む幕開けにもなっています。
初心者向けベストアルバム
The Very Best of Sting & The Police - Police時代からソロまで、代表作を網羅
1997年にリリースされた本作は、The Policeからソロまでのキャリアを完璧に凝縮した、まさに究極のベスト盤です。
Police時代の『Every Breath You Take』『Roxanne』から、ソロの代表作『Fields of Gold』『Englishman in New York』まで、時系列で収録された全18曲が、スティングの音楽的進化を如実に物語ります。
収録曲の選定バランスが素晴らしく、The Police時代とソロ時代の楽曲が絶妙なバランスで配置され、ロック、ジャズ、ワールドミュージックと、様々なジャンルを横断する彼の音楽性を余すところなく体感できます。リマスタリングによる音質の向上も嬉しい「スティング入門者にとって最適な1枚」としておすすめ!
ベスト・オブ・25イヤーズ - 四半世紀の軌跡を完全網羅した決定版
2011年リリースの本作は、より現代的な視点でスティングのキャリアを再構築した野心的なベスト盤です。The Policeの『Message in a Bottle』から、2010年の冬季オリンピックのテーマ曲となった『The End of the Game』まで、25年の歴史を2枚組全31曲で完全収録!
注目すべきは、オリジナルとは異なるミックスやライブバージョンの収録。例えば、クレイグ・デイヴィッドとの『Rise & Fall』(『Shape of My Heart』のサンプリング曲)や、メアリー・J.ブライジとデュエットした『Whenever I Say Your Name』など、コラボレーション作品も含まれています。キャリアの集大成として申し分のないベストコレクションです。
初心者向けスティング入門
スティングの魅力とは?
音楽界の知性派アーティストとして知られるスティング。その魅力は、複数の要素が絶妙に調和していることにあります。
第一に、唯一無二の表現力を持つバリトンボイス。力強さと繊細さを併せ持つその歌声は、ジャズからロックまで、どんなジャンルでも本質的な説得力を放ちます。
第二に、知的で詩的な歌詞と世界感。英文学教師だった経験を活かし、シェイクスピアやチョーサーからの引用、文学的なメタファー、そして現代社会への鋭い洞察を織り交ぜた歌詞は、聴くたびに新たな発見をもたらします。
そして第三に、ジャンルを超越したクロスオーバー性。ロック、ジャズ、クラシック、ワールドミュージック―様々な音楽要素を、独自の感性でブレンドする手腕は、多くのプロミュージシャンからも称賛されています。
スティングのアルバムの選び方
スティングの豊富なディスコグラフィーから、自分に合ったアルバムを選ぶポイントをご紹介します。
- 音楽的志向による選び方
- ロック志向:『The Dream of the Blue Turtles』『The Soul Cages』
- ジャズ志向:『Nothing Like the Sun』
- ポップス志向:『Ten Summoner's Tales』
- ワールドミュージック志向:『Brand New Day』
- テーマ性による選び方
- 社会派の楽曲を聴きたい → 『Nothing Like the Sun』
- 物語性のある作品を楽しみたい → 『Ten Summoner's Tales』
- 実験的なサウンドを探求したい → 『Brand New Day』
- 時代による選び方
- Police時代の延長線を聴きたい → 『The Dream of the Blue Turtles』
- 90年代の成熟期を味わいたい → 『Ten Summoner's Tales』
- 現代的なサウンドを楽しみたい → 『Brand New Day』
スティングのアルバム売上とその影響
スティングの音楽的影響力は、残してきた数字からも明確に読み取れます。The Police時代を含めた総アルバムセールスは1億枚を超え、グラミー賞は実に17回の受賞を誇ります。
そして驚くのはその影響の多様性です。例えば『Shape of My Heart』は、数多くのヒップホップアーティストにサンプリングされ、新たな命を吹き込まれています。『Desert Rose』は、アラブ音楽とポップスの革新的な融合として、クロスカルチャーな音楽の可能性を示しました。
また、環境保護や人権問題など、社会的メッセージを音楽に込めた先駆者としても評価が高く、後続のアーティストたちに大きな影響を与えています。アマゾン熱帯雨林の保護活動や、チリの人権問題への言及など、その活動は音楽界を超えて、社会的にも大きな反響を呼んでいます。
現在も毎年のようにワールドツアーを行い、新たな音楽的挑戦を続けるスティング。その姿勢は、純粋な音楽家として、そして思想家としての彼の真摯な生き方を物語っているといえるでしょう。
まとめ:初心者がスティング聴くなら、この名盤とベスト盤から!
40年以上にわたる音楽キャリアの中で、スティングは常に進化を続けてきました。その軌跡は本記事で紹介した5枚の名盤に鮮やかに刻まれています。
初めてスティングの音楽に触れる方には、まず『The Very Best of Sting & The Police』から始めることをお勧めします。The Police時代からソロ活動までの代表曲を一度に体験でき、スティングの全体像を把握するのに最適です。
その後、より深くスティングの音楽を探求したいと感じたら、ソロ・デビュー作『Dream of the Blue Turtles』から順に聴き進めていくのがベスト。ジャズへの大胆な挑戦、文学的な歌詞世界の確立、そしてワールドミュージックとの融合まで、その音楽的進化を時系列で体感できます。
スティングの音楽の魅力は、知的な歌詞、革新的なサウンド、そして普遍的なメッセージ性にあります。彼の楽曲は小説を読んでいるような味わい深さがあるので、私たちに新しい視点や気づきを与えてくれるでしょう!
現在も第一線で活動を続けるスティング。ここで紹介した過去の名盤たちと共に、彼の新たなチャレンジにもぜひ耳を傾けてみてくださいね♪
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