
アメリカンロック界に燦然と輝く伝説のバンド、ヴァン・ヘイレン。1974年の結成から2020年のエディ・ヴァン・ヘイレンの逝去まで、約45年間に渡って世界中のファンを魅了し続けました。エディの革新的なギター奏法は数多くのギタリストに影響を与え、デイヴィッド・リー・ロスやサミー・ヘイガーという個性的なヴォーカリストとの化学反応は、時代を超えた名曲を数多く生み出してきましたよね!
アルバム売上は全世界で8000万枚を超え、ロックンロール殿堂入りも果たした彼らの楽曲には、パーティーロックの代名詞から心に響くバラード、ポップで実験的な作品まで、驚くほど多彩な表情があります。
今回は、そんなヴァン・ヘイレンの長いキャリアから、特に印象的な代表的20曲を厳選してご紹介。バンドの多面性と音楽的進化を、珠玉の楽曲とともに振り返っていきます。
ヴァン・ヘイレンの代表曲
Jump(ジャンプ)
1984年、6thアルバム『1984』からの先行シングルとして発表された本作は、ヴァン・ヘイレン最大のヒット曲として知られています。
シンセサイザーを前面に押し出した新機軸の楽曲は、ロックバンドがシンセを使うことに対する批判もありましたが、結果的にバンド唯一の全米1位を記録する大成功を収めました。エディが子供の頃に習っていたクラシックピアノの経験が活かされた、親しみやすいメロディが特徴。
MTV時代の到来とも重なり、印象的なミュージックビデオも話題となりました。デイヴィッド・リー・ロス在籍時の最後のヒット曲として、ファンにとって特別な意味を持つ楽曲でもあります。
Runnin' with the Devil(悪魔のハイウェイ)
1978年、デビューアルバム『Van Halen』のオープニングトラックとして収録された本作は、バンドの凶暴性とグルーヴ感を見事に表現した代表曲。
マイケル・アンソニーの印象的なベースラインから始まる楽曲は、まさにヴァン・ヘイレンの「顔」と言える存在です。シンプルながら強烈なリフと、デイヴ・リー・ロスの野性的なヴォーカルが絶妙にマッチ。ライブでは定番中の定番として、数十年間歌い継がれています。
特に70年代後半のパンク/ニューウェーブ全盛期に、純粋なロックンロールの魅力を示した意義は大きく、多くのフォロワーバンドを生み出しました。
Panama(パナマ)
1984年、アルバム『1984』からの3rdシングルとして発表された本作は、デイヴ・リー・ロス時代の最高傑作の一つ。
車への愛を歌った歌詞と、エディのアタッキーなギターリフが組み合わさり、アメリカンロックの典型を示す楽曲となりました。実際の車のエンジン音をサンプリングするなど、制作面でも話題に。
全米13位を記録し、現在でもカーレースやスポーツイベントで頻繁に使用される人気曲です。エディのギターソロは技術的にも音楽的にも完璧と評され、多くのギタリストが模倣した名演として知られています。
Why Can't This Be Love
1986年、サミー・ヘイガーを新ヴォーカルに迎えた7thアルバム『5150』からのリードシングル。
バンドの新たな方向性を示すと同時に、商業的にも大成功を収めた記念すべき楽曲です。全米3位を記録し、ヘイガー時代の代表曲として定着。
よりメロディアスでハーモニアスなアプローチは、従来のファンからは賛否両論でしたが、新たな聴衆層を獲得することに成功しました。エディのキーボードとギターが絶妙に絡み合う楽曲構成は、バンドの音楽的成熟を示すものとして評価されています。
パーティーロック&ハードロック
Hot for Teacher
1984年、アルバム『1984』に収録された本作は、アレックス・ヴァン・ヘイレンの超絶ドラムソロで始まる衝撃的な楽曲。学校の女性教師への憧れを歌った歌詞は物議を醸しましたが、音楽的には非常に高い評価を獲得。
特に印象的なミュージックビデオは、MTVの歴史に残る名作として知られています。エディの踊り狂うような激しいギターテクニックが存分に発揮された楽曲でもあり、特にタッピング奏法の活用は後のギタリストたちに大きな影響を与えました。
Dance the Night Away(踊り明かそう)
1979年、2ndアルバム『Van Halen II』からのシングル。カリフォルニアのビーチカルチャーを反映した軽やかな楽曲で、全米15位のヒットを記録しました。
サーフロック的な要素も含んだメロディアスな仕上がりは、バンドの多面性を示す重要な作品。ラジオフレンドリーな楽曲として、より幅広い層にヴァン・ヘイレンの魅力を伝える役割を果たしました。デイヴ・リー・ロスの軽快なヴォーカルが特に印象的で、バンドのパーティーロック的側面を代表する楽曲として長年愛され続けています。
Unchained
1981年、4thアルバム『Fair Warning』に収録された本作は、重厚なリフと攻撃的なサウンドが特徴的なハードナンバー。
アルバム自体は商業的には控えめな成績でしたが、この曲は特にギタリストやハードロックファンから高い評価を受けています。エディのギタートーンの完成度は特筆すべきもので、現在でも多くのギタリストが参考にする名演として知られています。ライブでの盛り上がりも格別で、ファンからは「最もヴァン・ヘイレンらしさが強い名曲」として支持され続けています。
Right Now
1991年、アルバム『For Unlawful Carnal Knowledge』からのシングル。
社会批判的なメッセージを込めた歌詞と、印象的なミュージックビデオで話題となりました。全米55位と控えめなチャート成績でしたが、MTVでのヘビーローテーションにより幅広い認知を獲得。サミー・ヘイガー時代の代表曲の一つとして、バンドの社会的メッセージ性を示す重要な楽曲です。
90年代のオルタナティブロック全盛期にあって、ヴァン・ヘイレンの存在感を示した意義深い作品でもあります。
Atomic Punk
1978年、デビューアルバム『Van Halen』に収録された初期の名曲。
パンクムーブメントへの皮肉を込めたタイトルながら、楽曲自体は純粋なハードロックナンバーとして仕上がっています。エディのギターリフの創造性と、バンド全体のタイトなアンサンブルが光る楽曲。
デビュー当時のバンドの勢いと若々しいエネルギーが凝縮された、ファン必聴の1曲です。後年のライブでも時折演奏され、オールドファンからは特に愛され続けている隠れた名曲として知られています。
バラード&メロディアス
Love Walks In
1986年、アルバム『5150』に収録された本作は、サミー・ヘイガー時代を代表するバラード。
恋人との出会いを描いた美しい歌詞と、エディの感情豊かなギターソロが印象的です。全米22位を記録し、バンドの新たな魅力を示すことに成功。
特にギターソロの部分は、エディの演奏技術とエモーショナルな音楽性の両面で高い評価を受けており、多くのギタリストが研究対象とする名演として知られています。アルバム『5150』の中でも特に完成度の高い楽曲として、ファンからも批評家からも支持されています。
When It's Love
1988年、アルバム『OU812』からのリードシングルとして発表された本作は、全米5位の大ヒットを記録したラブソング。サミー・ヘイガーの情感豊かなヴォーカルと、エディの壮大で美しいギターアレンジが見事に調和した傑作です。
特にアコースティックギターとエレクトリックギターの絶妙な使い分けは、楽曲の魅力を大きく高めています。結婚式などでも頻繁に使用される定番ラブソングとして、一般層にも広く愛され続けている楽曲です。
Dreams
1986年、アルバム『5150』からの4thシングル。全米22位を記録し、サミー・ヘイガーの作詞・作曲能力を示す代表作となりました。
夢と希望をテーマにしたポジティブなメッセージソングで、80年代後半のアメリカ社会の雰囲気を反映した楽曲としても評価されています。エディのキーボードワークも効果的に使用され、バンドサウンドの新たな可能性を示した意欲作。現在でもライブで演奏される人気曲として、幅広い年代のファンに愛されています。
Can't Stop Lovin' You
1995年、アルバム『Balance』からのリードシングルとして発表された本作は幅広い年代の音楽ファンに受け入れられ、日本でも新しいリスナー層を大きく獲得した記念すべき楽曲。恋人への変わらぬ愛情を歌った美しいバラードで、全米30位を記録しました。
エディのピエゾギターとエレクトリックギターを組み合わせたキャッチーなアレンジが素晴らしく、90年代中期のバンドの円熟した音楽性を示す代表作です。多くのファンが「90年代ヴァン・ヘイレンの顔」と評価する名曲となっています。
実験的&ユニーク
Eruption(炎の導火線)
1978年、デビューアルバム『Van Halen』に収録されたインストゥルメンタル楽曲。
エディ・ヴァン・ヘイレンの革命的なギター奏法を世に知らしめた記念すべき作品です。わずか1分42秒の中に、タッピング、ハーモニクス、ワーミング奏法など、当時としては革新的な技術が詰め込まれています。この楽曲の登場により、ギター演奏の概念が根本的に変わったと言っても過言ではありません。現在でも多くのギタリストが挑戦する登竜門的存在として、音楽史にその名を刻んでいます。
Cathedral
1982年、5thアルバム『Diver Down』に収録されたインストゥルメンタル。
教会での反響音を意識した美しいアンビエント系のギターの響きが印象的で、エディの多面的な才能を示す楽曲として高く評価されています。
クラシック音楽への深い理解と、ピッキングの技術、ディレイ奏法が見事にマッチした名演。ハードロックバンドのイメージとは対照的な繊細さを持つ楽曲として、ファンからも批評家からも支持されています。アルバムの中では異色の存在ながら、ヴァン・ヘイレンの音楽的幅広さを証明する重要な作品です。
Spanish Fly
1979年、2ndアルバム『Van Halen II』に収録されたクラシカルなアコースティックギターソロ。
フラメンコギターの技法を取り入れた技術的にも音楽的にも高度な楽曲で、エディの幼少期のクラシック音楽教育の成果が如実に表れています。わずか1分程度の短い楽曲ながら、その完成度の高さは多くのクラシックギタリストからも絶賛されています。ハードロックファンだけでなく、クラシック音楽愛好家からも注目される異色の名曲!
316
1991年、アルバム『For Unlawful Carnal Knowledge』に収録されたインストゥルメンタル楽曲。息子ウルフガングの誕生日(3月16日)にちなんで名付けられた、エディから息子への愛情を込めた楽曲です。
ソリッドギター×ピエゾピックアップの持つ特性を活かした美しいメロディは、聴く者の心に深い感動を与えます。技術的な見せ場よりも、純粋な音楽性と感情表現に重点を置いた楽曲として、エディの作曲家としての成熟を示す重要な作品。父親としての愛情が音楽を通じて表現された、極めて個人的でありながら普遍的な魅力を持つ名曲です。
隠れた名曲&深イイ曲
Fair Warning
1981年、同名アルバムのタイトル曲として収録された本作は、バンドの最もハードで攻撃的な側面を示す楽曲。社会への警告的メッセージを込めた歌詞と、かなり重めのサウンドが印象的です。
商業的な成功は限定的でしたが、音楽的な完成度は非常に高く、特にハードロック/ヘヴィメタルファンからは隠れた名盤として高い評価を受けています。エディのギタートーンも特に素晴らしく、80年代初頭のハードロックシーンにおける重要な作品として位置づけられています。
Top of the World
1991年、アルバム『For Unlawful Carnal Knowledge』に収録された楽曲。環境問題への警鐘を鳴らす社会的メッセージと、明るめのアメリカンロックサウンドが融合した意欲作です。
サミー・ヘイガーの情熱的なヴォーカルと、エディの軽やかなギターバッキングが印象的。90年代初頭の社会情勢を反映した楽曲として、バンドの社会的意識の高さを示す重要な作品。こちらも商業的な成功は控えめでしたが、メッセージ性の強い楽曲として、コアなファンからは高く評価されています。
Humans Being
1996年、映画『ツイスター』のサウンドトラックとして発表された楽曲。
人間性や社会問題をテーマにした深いメッセージソングで、90年代中期のバンドの音楽的方向性を示す作品です。全米22位を記録し、久々のヒット曲となりました。エディとサミー・ヘイガーの共作による楽曲で、両者の音楽的個性が見事に融合。映画の内容ともマッチした壮大なスケール感を持つ楽曲として、バンドの円熟した音楽性を示しています。90年代のヴァン・ヘイレンを代表する隠れた名曲として、再評価が進んでいる作品でもあります。
Van Halenの名曲:まとめ
45年間という長いキャリアの中で、ヴァン・ヘイレンは実に多様な音楽性を見せてきました。今回紹介した代表曲は、その豊かな音楽的遺産のほんの一部に過ぎませんが、バンドの魅力の核心を捉えた選曲となっています。
デビュー当時の70年代後半は、『Runnin' with the Devil』『Eruption』といった革新的な楽曲で、ハードロック界に新風を吹き込みました。80年代前半には『Jump』『Panama』などの大ヒット曲を連発し、商業的な成功の頂点を極めます。
サミー・ヘイガー時代の80年代後半から90年代初頭にかけては、『Why Can't This Be Love』『When It's Love』『Dreams』など、よりメロディアスで成熟したアプローチを見せ、新たな音楽的地平を開拓しました。
注目すべきは、どの時代においても、エディ・ヴァン・ヘイレンの革新的なギター奏法が楽曲の中核を担い続けてきた点です。『Eruption』で示されたタッピング奏法から、『Cathedral』『316』といった繊細なな作品まで、その表現力の幅広さは驚異的でした。
また、デイヴィッド・リー・ロスとサミー・ヘイガーという2人の個性的なヴォーカリストとの化学反応が、それぞれ異なる魅力的な楽曲群を生み出したことも、バンドの大きな財産と言えるでしょう。
ヴァン・ヘイレンの楽曲は、単なるパーティーロックの枠を超えて、ギター音楽の可能性を大きく広げ、現在でも多くのミュージシャンに影響を与え続けています。エディ・ヴァン・ヘイレンの逝去により、新たな楽曲が生まれることはなくなりましたが、彼らが残した音楽的遺産は永遠に色褪せることはないでしょう。
本記事で紹介した楽曲はすべて、ロック史における重要な1ページを飾る傑作ばかりです。まだ聴いたことのない楽曲があれば、ぜひこの機会に体験してみてください。きっと、ヴァン・ヘイレンの表現力の深さと魅力に、新たな発見があるはずです。
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