ギターを持つと、まるで別人のように表情が輝き出す—。ビートルズの中で最年少、そして最も寡黙なメンバーとして知られるジョージ・ハリスン。
しかし彼は、バンドの看板曲「Here Comes The Sun」「While My Guitar Gently Weeps」を作り出した天才でもありました。スピリチュアルな探究者として東洋の智慧に魅了され、インド音楽の第一人者ラヴィ・シャンカルと深い親交を結んだことで、西洋音楽とインド音楽の架け橋ともなり、ビートルズメンバーの中でも異色の存在とも言えるでしょう。
1970年のビートルズ解散後、彼は精力的なソロ活動を展開。瞑想的な歌詞と卓越したスライドギターの音色で、独自のハリスンワールドを築き上げていきます。事実、2001年に58歳で永眠する最後の瞬間まで、彼は常に音楽を通じて魂の解放と平和を追求し続けました。
今回は、そんなジョージ・ハリスンの軌跡を辿るべく、ソロ時代の名盤TOP5と初心者にお薦めのベストアルバムをご紹介します。マテリアルな世界を超えて、より深い精神性へと誘う彼の音楽は、現代を生きる私たちの心にも確かな光を投げかけてくれるはずです。
それでは、各アルバムについて魅力的な解説を書いていきます。
ジョージ・ハリスンの名盤TOP5
All Things Must Pass - 解き放たれた才能の爆発
ビートルズ解散後わずか8ヶ月で発表された記念すべきトリプルアルバム。長年バンド内で押し込められていた楽曲群が一気に花開き、壮大なウォール・オブ・サウンドと共に世界中のリスナーを魅了!
フィル・スペクターとの共同プロデュースによる重厚なサウンドスケープに、エリック・クラプトンやデイブ・メイスンなど錚々たるミュージシャンの演奏が花を添えています。「My Sweet Lord」は全米No.1を獲得し、ビートルズ時代とはひと味もふた味も違うスピリチュアルな歌詞とメロディの融合は多くのリスナーに衝撃を与えました。
その他「What Is Life」「Isn't It A Pity」など、今なお色褪せることのない名曲の数々を収録。Rolling Stone誌の歴史的名盤500では常に上位にランクインし、2001年にはグラミー賞殿堂入りも果たしています。
Cloud Nine - 80年代のサウンドで魅せる復活
5年ぶりのスタジオアルバムにして、ELOのジェフ・リンをプロデューサーに迎えた意欲作。80年代のモダンなプロダクション(好き嫌いは分かれると思います)と、ハリスンならではの繊細なギターワークが見事に昇華されています。
「Got My Mind Set On You」は全米チャート1位を記録。エリック・クラプトン、リンゴ・スター、エルトン・ジョンなど豪華ゲストも参加し、ジョージの音楽的魅力を現代的にアップデートすることに成功しました。
制作時には、ジェフ・リンとの化学反応で新たな創造性が引き出され、批評家からも「キャリア後期の傑作」と高い評価を受けることに。
George Harrison - 等身大の姿を映し出した自画像
1979年の自身の名を冠したアルバム(邦題:慈愛の輝き)は、より親しみやすいポップ・ロックサウンドへと回帰した作品。スティーヴ・ウィンウッドやゲイリー・ライトらが参加し、温かみのある演奏がとても心地よい名盤です。
「Blow Away」「Here Comes the Moon」といった親しみやすいメロディと、なお深い精神性を感じさせる歌詞の組み合わせが絶妙!アルバム全体を通して、音楽家としての円熟味がひしひしと感じられる一枚です。
Living in the Material World - 精神と物質の狭間で紡がれた調べ
「All Things Must Pass」の大成功から3年、より内省的な世界観を打ち出した意欲作。インド音楽の影響をより強く感じさせる楽曲群に、ロックンロールの要素を巧みに織り交ぜてジョージ節が炸裂しています。
「Give Me Love (Give Me Peace on Earth)」は全米No.1ヒット。物質主義への警鐘と精神的な覚醒への願いを込めた歌詞は、現代にも通じるメッセージ性を持っています。当時の批評家からは賛否両論でしたが、時を経て再評価が進んでいます。ある意味、時代がやっと追いついたとも言えるでしょう!
Brainwashed - 魂の遺産として刻まれた最後の傑作
2001年に他界する直前まで録音を重ね、息子のダニーとジェフ・リンの手によって完成された遺作。死を意識しながらも、ジョージならではのユーモアと精神性が最後の最後まで貫かれています。
「Marwa Blues」はグラミー賞インストゥルメンタル部門を受賞。生涯をかけて追求してきたインド哲学への造詣と、ロック・ミュージシャンとしての技量が完璧なバランスで融合。
「最期まで音楽家としての誠実さを貫いた証」として、深い敬意を持って受け止められている歴史に残る一枚です。
初心者向けベストアルバム
Let It Roll: Songs by George Harrison - 魂の軌跡を辿る決定版ベスト
2009年にリリースされた最新のベスト盤は、ジョージの音楽人生を完璧にトレースする19曲を収録。ビートルズ時代の楽曲は最小限の収録として、純粋なソロ作品をメインに構成された公式ベストアルバムです。
デジタルリマスタリングによって音質が大幅に向上し、特に「My Sweet Lord」「What Is Life」のサウンドは格段に進化。
収録曲は時系列順ではなく、アルバム全体で一つの物語を紡ぐように緻密に配置。スピリチュアルな楽曲から、ポップなナンバーまでバランスよく網羅しており、初心者でも楽しみやすい構成となっているのが素晴らしい。
The Best Of George Harrison - 2つの顔を持つ伝説のベスト盤
1976年にリリースされた初のベストアルバム。特筆すべきは、A面にビートルズ時代の代表曲を、B面にソロ時代の名曲を収録するという大胆な構成です。
A面には「Here Comes the Sun」「Something」といったビートルズ時代の代表作を収録。ジョージが作詞作曲を手がけた楽曲のみを厳選しており、バンド内での彼の存在感を再確認できる内容となっています。
B面には「My Sweet Lord」「What Is Life」などソロ初期の代表曲を収録。当時としては斬新な2面構成により、ビートルズのジョージからソロ・アーティストとしてのジョージへの進化を、一枚のアルバムで体感できる構成に。
2つの時代を跨ぐアルバムとしては画期的で、現在でも根強い人気を誇るベスト盤です。特に、ビートルズファンがジョージのソロ作品に入る際の最適な入門編です!
初心者向けジョージ・ハリスン入門
ジョージ・ハリスンの魅力とは?
卓越したギタリスト、深い精神性を持つソングライター、そして東西の音楽を繋ぐ架け橋—。ジョージ・ハリスンの魅力は、この3つの要素が見事にバランスしている点にあると言って良いでしょう。
スライドギターの名手として、彼独特のどこまでも飛んでいくようなプレイスタイルは多くのギタリストに影響を与えました。またインド音楽の大家ラヴィ・シャンカルとの出会いは、彼の音楽性を大きく広げ、西洋のロック音楽に東洋の精神性を持ち込むという革新的な試みを生み出しました。
さらに、物質主義への警鐘や精神的な気づきをテーマにした楽曲は、人類に普遍的な問いとメッセージを発し続けていることも忘れてはいけません。
ジョージ・ハリスンのアルバムの選び方
ジョージの音楽をしっかり探求してみたいときは、以下の3つの時期に分けて聴くことをお勧めします:
- 初期黄金期(1970-1973):
ビートルズ解散直後の爆発的な創造性が特徴。「All Things Must Pass」を中心に、抑圧されていた才能が一気に開花した時期です。 - 中期成熟期(1974-1982):
よりパーソナルな作風へと移行し、ポップスとスピリチュアリティのバランスを模索した時期。「George Harrison」などが代表作です。 - 後期円熟期(1987-2002):
現代的なサウンドと精神性が見事に融合。「Cloud Nine」から遺作「Brainwashed」まで、円熟味のある作品が並びます。
初心者の方は、まずベストアルバムで全体像を掴み、その後興味を持った時期の作品を掘り下げてみてはいかがでしょうか?
ジョージ・ハリスンのアルバム売上とその影響
ソロ・デビュー作「All Things Must Pass」は世界的な大ヒットを記録し、全米・英で1位を獲得。累計売上は700万枚を超え、ソロ・ビートルズメンバーの作品としても最も成功した作品の一つとなっています。
80年代後半の「Cloud Nine」も全米TOP10入りを果たし、収録曲「Got My Mind Set On You」は全米1位を記録。これは、新しい世代にもジョージの音楽が強く支持された証といえるでしょう。
もちろん、彼の音楽的影響は売上数字だけでなく、後世のミュージシャンたちにも及んでいます。トム・ペティ、ジェフ・リン、そして現代のインディーロック・バンドまで、多くのアーティストが彼から影響を受けていることを公言しています。
2001年の死後も、その影響力は衰えることなく、2004年のロックの殿堂入り、複数のグラミー賞posthumous受賞など、その功績は音楽史に確固たる足跡を残しています。むしろ、生前は過小評価されていた気さえします...。
まとめ:初心者がジョージ・ハリスン聴くなら、この名盤とベスト盤から!
ジョージ・ハリスン作品への第一歩を踏み出すなら、まずは『The Best Of George Harrison』から始めることをお勧めします。ビートルズ時代からソロ活動初期までの流れを一望でき、彼の音楽性の進化を体感できる絶好の入門編ですからね!
その後、ソロ・アーティストとしてのジョージにより深く触れたい方は、『Let It Roll〜』で全貌を掴んでから、記念碑的名盤『All Things Must Pass』に進むのが理想的です。重厚なサウンドと深い精神性が融合した本作は、間違いなく彼の代表作といえます。
さらに探求を深めたい方には、80年代の復活作『Cloud Nine』がお勧め。現代的なサウンドプロダクションと、変わらぬ精神性が見事に調和した一枚です。そして最後に、遺作となった『Brainwashed』で、生涯をかけて追求し続けた彼の音楽的理想に触れてみてください。
ジョージ・ハリスンの音楽には、時代や言葉を超えて私たちの心に響く何かが確かに存在します。物質主義全盛の現代だからこそ、彼の示した精神的な深みと音楽的な卓越性は、より一層輝きを増しているのかもしれません!
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