あの夜、誰もが息を呑んだ。2007年、ドラマ「ソプラノズ」最終回。突如として流れ出した「Don't Stop Believin'」が、何百万人もの視聴者の心を鷲掴みにした瞬間だ。1981年のリリースから26年。たった一曲で、ジャーニーは再び世界中の話題をさらったのです。
しかし、これは彼らの音楽が持つ力の一片に過ぎない。クラシック出身のキーボーディスト、サンタナで才能を磨いたギタリスト、そして "神の声" と称されたスティーヴ・ペリー。
異なるバックグラウンドを持つメンバーたちによる、壮大なスケールのハードロック、魂を揺さぶるバラード、ブルースの粋を凝らした珠玉の名曲の数々。4000万枚を超えるアルバムセールスも、間違いなくモンスター級である。
栄誉あるロックの殿堂入りを果たした彼らの楽曲は、いまなおSpotifyで毎月2000万回以上再生され続けている。
ここでは、古くからのファンだけでなく若い世代にも支持される彼らの代表曲を、様々な音楽性に注目して紹介していきます!
ジャーニーの代表曲
Don't Stop Believin'
「小さな町の女の子」「深夜の列車」―誰もが共感できるアメリカンドリームを描いた永遠の名曲です。
1981年、アルバム『Escape』からのリリースで、発売当時はBillboard Hot 100で9位を記録。しかし、本当の輝きを放つのは後年。2007年のドラマ「ソプラノズ」での使用を皮切りに、iTunes Store週間ランキング1位、Spotifyでの8億回再生と、デジタル時代の代表曲となりました。人生の岐路に立つたび聴きたくなるエールソング!
Separate Ways (Worlds Apart)
1983年、アルバム『Frontiers』収録の本作は、シンセサイザーの大胆な使用方法で注目を集めました。
MVの斬新な映像美とともに、全米チャート8位という好成績を収めています。ジョナサン・ケインとスティーヴ・ペリーが、失恋の痛みをエネルギッシュなロックに昇華した楽曲で、制作時は「バンドの新しい方向性を示す曲になる」と確信していたそうです。
Any Way You Want It
アルバム『Departure』からの1980年の先行シングル。ジェフ・ワークマンのプロデュースで生まれた本作。潔いサビ始まり、キャッチーなコーラスと疾走感あるギターリフが気持ちいい!
Billboard Hot 100で23位を記録し、その後数々のCMやゲームに使用され続けています。「ドライブの定番曲」としても人気が高いナンバー。
Open Arms
スティーヴ・ペリーとジョナサン・ケインが1981年に紡ぎ出した究極のラブバラード。アルバム『Escape』収録。
当初バンドメンバーは「柔らかすぎる」と難色を示したものの、Billboard Hot 100で2位、32週連続チャートインという大記録を打ち立てました。結婚式の定番ソングとしても長年選ばれ続けており、「この曲なしには人生は語れない」というファンも多いです。
その普遍的な魅力は数々のアーティストの心も捉え、マライア・キャリーが1996年にカバー。さらに、アメリカのオーディション番組「アメリカン・アイドル」では、最も多くコンテスタントが選んだ課題曲の一つとなっています。特に2002年のケリー・クラークソンのカバーは、彼女の優勝に貢献した名パフォーマンスとして記憶されています。
Wheel in the Sky
1978年、アルバム『Infinity』からのブレイクスルー作品。ロバート・フレイプの詩的な歌詞とニール・ションのカーボーイウエスタン風のギターが見事に調和しています。
スティーヴ・ペリーがバンドに加入後、初めてBillboard Hot 100に登場した記念碑的な曲(57位)です。「実家に帰る長距離ドライバーの心情」を描いた歌詞は、多くのツアーミュージシャンの共感を呼びました。
Stone in Love
1981年の『Escape』アルバムに収録された隠れた名曲。チャート実績は控えめながら、コアなファンの間では「最高の一曲」と評価される存在です!ジャーニーソングの中でも、かなりアメリカンなアレンジです。
夏の思い出と青春の輝きを描いた歌詞は、ペリーが実際の経験から着想を得たと言われています。ライブでは必ず大合唱が起こる人気曲の一つです。
ハード系のロック曲
I Can See It in Your Eyes
アルバム『Trial By Fire』収録のモダンヘヴィーロック曲。
杭を打ち込むようなタイトなリズムセクションの上で暴れるニール・ションの技巧派ギターが見事な調和を見せ、アルバム屈指のライブ映えする楽曲として知られています。特にワウペダルを活用したエンディングのスリリングな展開は、大人っぽいイメージが強いこのアルバムの中でも際立つ存在となっています。
Chain Reaction
1983年『Frontiers』からの強力なロックナンバー。シュレッディングなベースラインを軸に展開される重厚なアンサンブルは、バンドの技術力の高さを如実に示しています。
レコーディング時、バンドは「より攻撃的なサウンド」を求めて何度もテイクを重ねたと言われています。ライブではニール・ションの超絶ギターソロが追加され、観客を熱狂させる定番ナンバー♪
Edge of the Blade
『Frontiers』収録の本作は、スティーヴ・スミスの正確無比なドラミングが光ります。
1983年のリリース当時、ヘヴィメタルの台頭する音楽シーンの中で、ジャーニーの硬派な一面を示す一曲となりました。「このリフを弾けるようになって、初めてギタリストを名乗れる」というギター少年たちで溢れていた時代を懐かしむ声も多い!
Be Good to Yourself
1986年、アルバム『Raised on Radio』のリードシングルとして発表。Billboard Hot 100で9位を記録する好セールスを記録。
当時バンドは内部的な問題を抱えていましたが、その逆境を跳ね返すかのような前向きなメッセージとシンプルな8ビートによる力強いサウンドは、多くのファンの心を捉えました。特にライブバージョンでは、ペリーの感情的なボーカルが一際冴え渡る神曲でした!
Ask the Lonely
1983年、映画「Two of a Kind」のサウンドトラックとして書き下ろされた楽曲。
後に『Frontiers』のボーナストラックとして収録されました。当時流行っていた劇的な展開とエモーショナルなギターソロが特徴で、商業ロックを食わず嫌いしていたハードロックファンからも高い評価を受けました。ジャーニーの真骨頂はこの曲にあると言えるクオリティーの高さ。
Higher Place
2001年、アルバム『Arrival』からの重量級のロックナンバー。
約10年ぶりとなるオリジナルアルバムの収録曲として、バンドの新たな方向性を示した意欲作です。卓越したメロディセンスと重厚なバンドサウンドの融合は、まさにジャーニーの真骨頂。90年代後半というグランジやオルタナティブが主流の時代にあって、様式美を追求したクラシカルなハードロック路線を貫いた勇気ある一曲といえます。
ハイパーロー帯域のマスタリング処理も素晴らしいので、ウーファーを積んだカーオーディオで爆音で聴くと超気持ちいい曲です(笑)
バラードの名曲
Faithfully
1983年、アルバム『Frontiers』収録の永遠の名バラード。ジョナサン・ケインがツアーバスの中で一気に書き上げた楽曲で、バンドマンとその家族との関係を描いたドラマチックな歌詞は多くのミュージシャンの心を打ちました。
Billboard Hot 100で12位を記録。楽曲の印税を作曲者のケインが、ツアーミュージシャンの家族支援に充てているところも素敵ですね。
When You Love a Woman
1996年、アルバム『Trial by Fire』からのシングルカット。グラミー賞にノミネートされ、Billboard Hot 100で12位という好成績を収めました。
レコーディング時、スティーヴ・ペリーは完璧なテイクを求めて3日間歌い続けたと言われています。その努力は実を結び、彼の代表的なボーカルパフォーマンスの一つとして高く評価されています。純粋な愛を歌い上げた歌詞と壮大なオーケストレーションは、この世のものと思えない美しい仕上がりです。
Send Her My Love
1983年の『Frontiers』に収録された叙情的なミディアムバラード。Billboard Hot 100で23位を記録。
ペリーの繊細なボーカルワークと、ニール・ションのエスニックな旋律を繰り返すギターソロが絶妙な調和を見せています。失恋の痛みと未練を描いた歌詞は、AOR風味の曲調ともベストマッチ。
Girl Can't Help It
1986年、アルバム『Raised on Radio』からの一曲。Billboard Hot 100で17位を記録した本作は、80年代後半のバラード隆盛期にあって、バンドの個性を見せつけた傑作です。
スティーヴ・ペリーの甘く切ない歌いまわしと、ジョナサン・ケインのエレピが生み出す浮遊感たっぷりの雰囲気は、多くのバラードファンを魅了しました。MVの映像美も相まって、MTVでヘビーローテーションされた思い出の一曲です。
Who's Crying Now
1981年、アルバム『Escape』からのヒット曲。Billboard Hot 100で4位という高位をマークし、バンド史上最大のバラードヒットの一つとなりました。
ジョナサン・ケインが作曲の核となるピアノフレーズを思いついたのは真夜中で、すぐにスティーヴ・ペリーに電話をかけたというエピソードは有名です。男女の複雑な関係性を描いた歌詞と、哀愁たっぷりのメロディラインは、大人ラブソングの決定版!
渋い!ブルージーなナンバー
Feeling That Way
1978年、アルバム『Infinity』に収録された、ジャーニー流ブルースロックの名曲。
スティーヴ・ペリーとキーボーディストのグレッグ・ロリーによるデュエットボーカルは、バンド史上最も貴重なプレイの一つとして語り継がれています。ライブでは次曲「Anytime」と繋げて演奏されることが多く、ライブでもファンが最も期待する演目の一つ。
Lights
1978年、同じく『Infinity』からのシングル。サンフランシスコへの愛を込めたこの曲は、Billboard Hot 100で68位という控えめなチャート成績ながら、後にバンドの代表曲の一つとなりました。
もともとロサンゼルスの街を歌った曲でしたが、ペリーの加入後に歌詞を改変。ベイエリアの夜景を思わせる幻想的なサウンドスケープと、ロッカバラードのリズムに乗るブルージーなギターソロが、故郷への郷愁を見事に表現しています。地元サンフランシスコの野球チーム「ジャイアンツ」の試合後には必ずこの曲が流れる、という伝統も生まれました。
Lovin', Touchin', Squeezin'
1979年、アルバム『Evolution』からのシングルカット。Billboard Hot 100で16位を記録し、バンドの初期を代表するシンプルなブルースナンバー。
スティーヴ・ペリーが実際に目撃した、元ガールフレンドと別の男性とのキスシーンから着想を得たという赤裸々な制作秘話も。最後のナナナというコーラスは、60年代のソウルミュージックへのオマージュとして付け加えられ、ライブでは必ず観客との一体感を生む瞬間となっています。
Mother, Father
1981年の大ヒットアルバム『Escape』に収録された感動的なマイナーブルース超のバラード。
スティーヴ・ペリーの実体験に基づく歌詞は、両親との複雑な関係性を赤裸々に描き出しています。セッションではバンドメンバー全員が涙を流しながらレコーディングしたというエピソードも。
切り裂くようなギターソロとペリーの雄叫びのような歌唱は、家族との関係に悩む多くのリスナーの心を癒してきました。
ジャーニーの代表曲紹介:まとめ
スタジアムロックの黄金期、AOR全盛の時代を駆け抜けたジャーニー。しかし彼らの真価は、単なる時代の寵児に留まらない深い音楽性にあります。
ハードロックの轟音から繊細なバラード、ブルースの粋まで、あらゆる音楽性を最高峰のクオリティで表現してきた背景には、各メンバーの多彩な音楽的ルーツがありました。サンタナで経験を積んだニール・ション、クラシックのトレーニングを受けたジョナサン・ケイン、ソウルミュージックに心酔していたスティーヴ・ペリー。異なる音楽的背景を持つメンバーたちが、それぞれの個性を昇華させることで、唯一無二のサウンドが生まれたのです。
ここで紹介した21曲は、そんな彼らの音楽的万華鏡の結晶といえます。時に天を突くようなスティーヴ・ペリーの歌声は魂を揺さぶり、ニール・ションの研ぎ澄まされたギターは心を切り裂き、ジョナサン・ケインのキーボードは物語を紡ぎ出す。そして、ロス・バレンとスティーヴ・スミスによる精緻なリズム隊が、その全てを完璧に支え上げる——。
彼らが追求した「最高の音楽性とキャッチーさの共存」という理想には、完璧主義に近いような美的センスを感じずにはいられません!
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