クイーンの14枚目のオリジナルアルバム「Innuendo(イニュエンドウ)」は、1991年にリリースされた作品です。
このアルバムは、フレディ・マーキュリーの命が尽きるわずか数ヶ月前に公開され、彼の実質的な最後のアルバムとなりました。
QUEENにしか作れないバラエティーに富んだ世界観、深い歌詞、そして病の中とは思えないほど力強いフレディーのボーカルパフォーマンスが、数あるアルバムの中でもファンに強い印象を残しています。
本記事では、「Innuendo」の背景、特色、そして各曲の紹介を通じてこの感慨深いアルバムを細かく解説していきます。
QUEEN 14枚目のアルバム「Innuendo(イニュエンドウ)」概要
販売年月日: 1991年2月5日
収録曲数: 12曲
売上枚数: 全世界で約500万枚以上
アルバムの特色: フレディ・マーキュリーの生涯で最後のアルバムであり、彼の壮絶なパフォーマンスが際立つ作品。
参加メンバー: フレディ・マーキュリー、ブライアン・メイ、ロジャー・テイラー、ジョン・ディーコン
プロデューサー: クイーン、デイヴィッド・リチャーズ
エンジニア: ジャスティン・シャーリー=スミス、ノエル・ハリス、Kevin Metcalf(マスタリング)
収録スタジオ: メトロポリス・スタジオ、マウンテン・スタジオ他
レーベル: Parlophone Records、Hollywood Records
収録曲:解説とレビュー
1. Innuendo (イニュエンドウ)
- 作詞作曲: クイーン
アルバムのオープニングトラック「Innuendo」は、とびっきりダークで緊迫感たっぷりのスリリングな一曲。
この曲では、360度の広いオーケストレーション、フラメンコ風のスパニッシュなギターソロ(スティーヴ・ハウによるゲスト演奏)、そしてオペラチックなブリッジが見事に融合されています。
歌詞の中で、フレディ・マーキュリーは生の不確実性と運命への挑戦を繊細に描き出し、まるで人生の謎に対する答えを求めるかのように響きわたります。
これから繰り広げられる楽曲群への期待をゾクゾクと高めてくれるアルバム・タイトルにもなっている看板曲。
2. I'm Going Slightly Mad (狂気への序曲)
- 作詞作曲: クイーン
フレディ・マーキュリーの独特なユーモアと彼が直面していた健康上の問題への隠喩を含んでいます。
中世ヨーロッパの館で、ピエロや蝋人形たちが夜な夜な不気味な宴が繰り広げられているようなイメージ。
不穏でありながらもキャッチーなメロディですが、歌詞と共に人生の不条理と狂気を描き出しています。
ブライアンメイのギター・ソロも、スライドバーを使ったボトルネック奏法で、普段とは違ったトーンで狂気を演出。
3. Headlong (ヘッドロング)
- 作詞作曲: クイーン
今にも暴走機関車が走り出しそうな疾走感!
ブギーなノリがあふれるギターリフと、歯切れの良いフレディのボーカルが際立つロックトラックです。
サウンドの通り、人生を躊躇なく駆け抜ける姿勢を表現しており、ストレートに拳を振り上げれるライブ向けの仕上がり。
4. I Can't Live With You (アイ・キャント・リヴ・ウィズ・ユー)
- 作詞作曲: クイーン
愛する人との関係の複雑さを描いたロックバラードです。
愛の喜びと苦悩の間で揺れ動く感情を表現しており、フレディーのハイトーンも気持ちよく伸びまくります。
バラードでも湿っぽさを感じさせないサウンドに、程よい塩梅の華やかさとリッチ感。
クイーンのキャッチーさといえばこんな感じ!という好例。
5. Don't Try So Hard (ドント・トライ・ソー・ハード)
- 作詞作曲: クイーン
優雅で情感豊かなボーカルが印象的な一曲です。
人生において常に最高を目指すことのプレッシャーに対する、柔和だが力強いアンセムと言えます。
エーテル的なキーボードのアレンジと、空間を埋め尽くすようなサウンドスケープが、曲の夢想的な雰囲気をさらに高めています。
努力の価値と限界についての繊細なバランスを探る詩的な歌詞が際立ち、幅広い世代の共感を呼びます。
皮肉にも、どこかちょっとフレディーの声の線が細く感じるのが、演出なのかどうかはわかりません。
6. Ride The Wild Wind (ライド・ザ・ワイルド・ウィンド)
- 作詞作曲: クイーン
「Ride The Wild Wind」は、スピード感と解放感あふれる楽曲で、人生を全力で楽しむことの重要性を讃えています。
ピック弾きのベースラインが、この曲のドライブ感を支えており、文字通り風を切って進むようなサウンドエフェクトもいい感じに馴染んでいます。
昼間の風っていうより、ドライブ中の夜風のような印象が強いです。
7. All God's People (神々の民)
- 作詞作曲: クイーン、マイク・モラン
この楽曲は、伝統的なゴスペル調の豊かなコーラスと、フレディ・マーキュリーのソウルフルなボーカルが特徴です。
どこか、初期の頃のクイーンを思い出す質感のコーラスですね。
人類愛と結束を訴える歌詞は、クイーンというバンドの普遍的なメッセージを反映しています。
演奏も生々しさを全面に出している印象で、生命や人の多様性と調和の美を讃えているように思えます。
8. These Are The Days Of Our Lives (輝ける日々)
- 作詞作曲: クイーン
過ぎ去る時の美しさと、人生のかけがえのない瞬間を優しく回想する内容が心を打ちます。
そよ風が頬を撫でる草原に寝転がって、目を閉じながら穏やかな日々に思いを馳せるときに聴きたい曲。
アレンジ的にはシンプルなポップス編成ですが、空間を味わうことが出来る貴重な1曲。
9. Delilah (愛しきデライラ)
- 作詞作曲: クイーン
フレディ・マーキュリーの愛猫に捧げられた「Delilah」
ペットへの愛情を軽妙な歌詞と愛らしいメロディで表現しており、微笑ましい。
楽曲中に散りばめられた猫の鳴き声を真似るアプローチや、楽し気なピアノのリフは遊び心たっぷり。
人とペットとの間に存在する特別な絆を祝福し、日常の小さな幸せを讃える作品として、多くのファンから愛されています。
10. The Hitman (ザ・ヒットマン)
- 作詞作曲: クイーン
クイーンが見せるHR/HMの一面を強調した楽曲で、「ヒットマン」の心情を巧みに表現しています。
鮮烈なラウドロック・メタル調のサウンドに、クイーン流の様式美が映えます。
味付けは派手目なのですが、演っていることは以外とシンプルで、そこが説得力に繋がるという好例。
11. Bijou (ビジュウ)
- 作詞作曲: クイーン
ブライアン・メイの美しくも咽び泣くギタープレイが印象的です。
この楽曲では、ギターが主役でほぼインスト曲。
その繊細なタッチと表現力は、失われた美を悼むような深い感情を呼び起こします。
12. The Show Must Go On (ショウ・マスト・ゴー・オン)
- 作詞作曲: クイーン
アルバムの締めくくりを飾る「The Show Must Go On」は、フレディ・マーキュリーの生と死、そしてアーティストとしての不屈の精神を象徴する楽曲です。
逆境に立ち向かう決意を表しており、ありったけの愛とありったけの力を振り絞って歌っていて、聴き終える頃にはリスナーも一汗かいてしまうほどのエナジーフル。
そして、ブライアン・メイのオブリガート(裏メロ)が天才的にカッコいい。
アルバムの特徴がわかる、レーダーチャート
アルバム・ジャケット
クイーンのアルバム『Innuendo』のカバーアートは、クイーンとリチャード・グレイによって担当され、19世紀フランスの画家ジャン=ジャック・グランヴィルのイラストに触発されたものです。
特に、アルバムのカバーに使用されたアートデザインは、グランヴィルの『Jaggler of Universes』からのイラストに基づいています。
チャート順位
英国でのチャート順位
クイーンのアルバム『Innuendo』は、英国のアルバムチャートで1位を獲得し、2週間その位置を保持しました。
アメリカでのチャート順位
アメリカにおいては30位を記録してゴールド認定。
その他の国でのチャート順位
イタリア、オランダ、ドイツ、スイスでも1位に輝き、それぞれ3週間、4週間、6週間、8週間チャートの頂点に立ちました。
世間の評価(評論家・ファンの評価)
クイーンのアルバム『Innuendo』に対する世間の評価は、フレディ・マーキュリーが生前に録音した最後のアルバムとして特に注目を集め、高い評価を受けました。
批評家からの評価
『Innuendo』は、批評家から一般的に高い評価を受けています。Rolling Stoneのチャック・エディは1991年に、アルバムをクイーンの最も遊び心のある作品と評し、そのクラフトマンシップを称賛しました。2016年、同誌のロン・ハートは、『Innuendo』をクイーンの最後の傑作と呼び、デビッド・ボウイの『Blackstar』に例えながら、死を前にした作品として高く評価しました。AllMusicも、このアルバムがロックの最も成功したキャリアのひとつを締めくくるにふさわしい作品であると述べています。
ファンからの評価
ファンの間では、『Innuendo』はクイーンのディスコグラフィーの中でも特に愛されるアルバムとなっています。フレディ・マーキュリーの生涯で最後に録音されたアルバムという事実は、ファンにとって非常に感慨深いものがあり、彼の力強いパフォーマンスとバンドの音楽的な遺産に対する敬意を新たにしています。特に「The Show Must Go On」などの楽曲は、マーキュリーの闘病生活と彼の芸術への情熱を象徴するものとして、多くのファンから高く評価されています。
アルバム・タイトル
『Innuendo』というアルバムタイトルは、アルバム全体が持つ多層的で複雑なテーマやメッセージを巧みに象徴しています。
"Innuendo"という言葉自体には、「ほのめかし」や「間接的な表現」「暗示」といった意味があります。
このタイトルは、より深いレベルで聴き手に語りかけるクイーンの意図を反映していると言えるでしょう。
アルバム『Innuendo』は、フレディ・マーキュリーの生前最後のアルバムとして特別な位置を占めています。マーキュリーの健康状態が悪化する中、バンドメンバーは彼の遺産となる作品を創り上げることに集中しました。
この背景から、アルバムタイトルは、人生の不可避な終焉とそれに直面する際の様々な感情や反応、時にはユーモアや皮肉を交えながら、その背後にある深いメッセージや感情を読み解くよう促しているようです。
フレディ・マーキュリーの人生とクイーンの音楽的旅路の集大成とも言えるこのアルバムは、その名が示す通り、直接的な言葉では語り尽くせない豊かな表現の世界を抱えています。
クイーン 14枚目のアルバム「Innuendo(イニュエンドウ)」解説のまとめ
QUEENの14枚名となるアルバム「Innuendo(イニュエンドウ)」は、クイーンが残したアルバムの中でも特に感動的で深みのある作品であり、フレディ・マーキュリーの生涯を締めくくるアルバムとして、そのメッセージには特別な重みがあります。
アルバムに収録された各曲は、彼らの音楽的な探求心と、人生の最後の段階にあってもなお新たな表現を追求するバンドの姿勢を世界に表明してくれました。
この作品を通じて、クイーンは音楽が持つ力、人生の複雑さと美しさ、そしてアートを通じた人間の不屈の精神を見事に作り上げています。
ぜひ、アルバム制作の背景も理解したうえで、もう一度じっくり聴きなおして欲しい1枚です。
きっと、新たな気付きや発見、そして感動が見つかるはずです。