クイーンのアルバム『A Kind of Magic(カインド・オブ・マジック)』は、1986年にリリースされたバンドの12枚目のオリジナルアルバムで、特に映画『ハイランダー ~悪魔の戦士~』のサウンドトラックとして使用された楽曲を含むことで知られています。
映画音楽としての役割を果たしつつもヒットした人気曲を多く含んでおり、単独のアルバムとしてもその完全性を保っていることで評価されています。
ここでは、『A Kind of Magic』の概要や収録曲の魅力、ジャケットやチャート順位、アルバムの評価について網羅的に解説します。
QUEEN 12枚目のアルバム「A Kind of Magic(カインド・オブ・マジック)」概要
販売年月日: 1986年6月2日
収録曲数: 9曲
売上枚数: 全世界で約600万枚を記録
アルバムの特色: 映画『ハイランダー』のために書かれた楽曲を中心に構成され、ロック、ポップ、バラードと多彩なジャンルを展開。クイーンの音楽的多様性と、映画音楽としての新たな試みが反映されている。
参加メンバー: Freddie Mercury (フレディ・マーキュリー), Brian May (ブライアン・メイ), Roger Taylor (ロジャー・テイラー), John Deacon (ジョン・ディーコン)
プロデューサー: Queen, David Richards, Mack
エンジニア: David Richards, Mack
収録スタジオ: The Town House, Musicland Studios, Mountain Studios
レーベル: EMI Records、Capitol Records
特別エディション: 2011年にリマスター版がリリースされ、未発表トラックやリミックスが追加された。
収録曲:解説とレビュー
1. One Vision (ひとつだけの世界)
- 作詞作曲: Queen
アルバムのオープニングトラック「One Vision」は、全メンバーによる共作で、アルバム1曲目に相応しい「幕開け」や「目覚め」を告げるような大きめのサウンドスプレッドが特徴です。
この曲は、1985年のライブエイドでのパフォーマンス後に生まれた、世界の団結と平和への願いを表現しています。
カラッとしたギターのコードバッキング、控えめながらインテリジェンスなストリングス、イントロやアウトロのちょっとゾクッとするSE、このバランス感覚が流石です。
2. A Kind of Magic (カインド・オブ・マジック)
- 作詞作曲: Roger Taylor
映画『ハイランダー』のテーマとして書かれたタイトルトラック「A Kind of Magic」は、幻想的さとジェントルさを兼ね備えたサウンドとキャッチーなメロディが特徴の楽曲です。
どこか、邪気を一切寄せ付けない「守護神」のイメージを感じます。
3. One Year of Love (愛ある日々)
- 作詞作曲: John Deacon
「One Year of Love」は、John Deaconによって書かれた、しっとり目のロッカバラードです。
この楽曲は、愛の持続とその変遷を優しく描き出し、サックスのフレージングが特徴的なアレンジが施されていますが、普通のジャズっぽくならないようなところがクイーンならでは。
フレディ・マーキュリーの情感豊かな歌いまわしが楽曲の雰囲気を一層深め、「愛ある日々」がどれほど尊い奇跡なのかを思い出させてくれます。
4. Pain Is So Close to Pleasure (喜びへの道)
- 作詞作曲: Freddie Mercury, John Deacon
スムーズなコンテンポラリーR&B風のアレンジが施された楽曲です。
愛の複雑さと、喜びと苦痛が密接に関連していることをテーマにしています。
メロディックなベースラインとフレディのソウルフルなボーカルが、小気味よいリズムと融合していて、薄明るい夕方に聴きたくなる1曲。
5. Friends Will Be Friends (心の絆)
- 作詞作曲: Freddie Mercury, John Deacon
タイトル通り、友情の大切さを歌った心温まる楽曲です。
厚い友情に支えられたバンドメンバー同士の絆を反映しています。
おそらく、コンサートでの観客と大合唱しての一体感を生み出すことも想定して「万人が覚えやすく、歌いやすい」メロディーに仕上げているのではないでしょうか。
エンディングでワウペダル(フィルター系エフェクター)を使用した泣きのギターでフェードアウトしていくのも良い。
6. Who Wants to Live Forever (リヴ・フォーエヴァー)
- 作詞作曲: Brian May
「Who Wants to Live Forever」は、映画『ハイランダー』の中でも特に感動的なシーンのために書かれた重量級のバラードです。
Brian Mayの哀愁を帯びたギター(トーンコントロールが素晴らしい!!)と大編成オーケストラのアレンジが、永遠の命を持つことの悲しみを深く表現しています。
7. Gimme the Prize (Kurgan's Theme) (ギミ・ザ・プライズ)
- 作詞作曲: Brian May
映画『ハイランダー』のキャラクター、クルガンに捧げられた楽曲です。
ヘヴィなディストーションギターと、映画のサウンドクリップが随所に使用されていることが特徴で、迫力で押し切るサウンドが曲全体を支配しています。
映画のダークな雰囲気と、クイーンのロックサウンドが完璧に融合した一曲です。
8. Don't Lose Your Head (ドント・ルーズ・ユア・ヘッド)
- 作詞作曲: Roger Taylor
エレクトロニックビートと合成音が特徴的な、アルバムの中でも一際異彩を放つトラック。
試練や困難に直面しても決して希望を失わないようにというメッセージを伝えており、クイーン流のエールソングのひとつ。
ディスコ色も強いので、好き嫌いがはっきり分かれる曲です。
9. Princes of the Universe (プリンシス・オブ・ザ・ユニヴァース)
- 作詞作曲: Freddie Mercury
映画『ハイランダー』でも使用された「Princes of the Universe」は、エピックなギターリフと巨大なサウンドスケープが特徴の楽曲です。
映画の壮大な物語と、不死を求める戦士たちの戦いを音楽で描き出しています。
とにかくヒュージなドラム、フレディーの雄叫び、予測不能なスリリングな展開と、聴く側の心拍数をたっぷり上げてくれる曲です。
アルバムの特徴がわかる、レーダーチャート
アルバム・ジャケット
アルバムジャケットのデザイン
- カバーアート: 『A Kind of Magic』のアルバムカバーは、ポップで鮮やかな色彩とファンタジックな要素が特徴です。メンバーの漫画風のイラストが描かれています。アルバムタイトルにちなんで、魔法やファンタジーの世界を連想させるようにも、メンバーがダンスホールで踊っているようにも見えます。
- ビジュアルスタイル: アルバムジャケットは、カラフルでビビッド。夢幻的なイメージを用いており、アルバムに収録されている楽曲の幅広いテーマと感情を象徴しているとも取れます。
アートワークの背景
- アルバムと映画の関連: 『A Kind of Magic』は、映画『ハイランダー 悪魔の戦士』のサウンドトラックとしても機能しており、アルバムには映画のために制作された楽曲がいくつか含まれています。この映画との関連は、アルバムアートワークのファンタジー要素にも反映されており、音楽とビジュアルアートの間のクリエイティブなシナジーを生み出しています。
- デザイン担当: アルバムのイラストは、Roger Chiassonによってデザインされました。アートワークのカラー担当はJenny Robinson、スリーブ担当はRichard Gray。
チャート順位
英国 (UK)
- チャート最高位: 1位
- 英国では大成功を収め、発売初週に10万枚を売り上げ、チャートに63週間とどまり、英国だけで60万枚を売り上げました。
アメリカ (US)
- チャート最高位: 46位
- アメリカではトップ50内にランクインしましたが、英国ほどの大成功は収めませんでした。
日本
- チャート最高位: 25位
- 日本でもクイーンの人気を裏付ける良好なチャート成績を収めました。
『A Kind of Magic』は、特に英国での成功が顕著で、クイーンの持続的な人気と音楽的影響力を示す結果となりました。
アルバムからのシングル「A Kind of Magic」「One Vision」「Friends Will Be Friends」「Who Wants to Live Forever」はヒットし、特に「A Kind of Magic」と「Who Wants to Live Forever」は、映画『ハイランダー 悪魔の戦士』のサウンドトラックとしても使用され、アルバムのプロモーションに貢献しました。
世間の評価(評論家・ファンの評価)
批評家からの評価
- ポジティブな評価: 『A Kind of Magic』は批評家から一般的に好意的なレビューを受けました。アルバムはその商業的なアプローチと、映画『ハイランダー』への楽曲提供により、クイーンの音楽的な柔軟性と才能を示すものとして評価されました。特に「A Kind of Magic」「Who Wants to Live Forever」などの楽曲は、批評家から高い評価を受けました。
- 賛否両論: 一部の批評家は、アルバム全体が映画サウンドトラックの役割を果たしていることから、クイーンの以前のアルバムに比べてコンセプトが散漫だと指摘しました。しかし、この点は一部のリスナーにはプラスとして受け入れられました。
ファンからの評価
- ファンの支持: ファンからは『A Kind of Magic』が熱烈に支持されました。アルバムは、ライブエイドでの伝説的なパフォーマンスに続くクイーンの作品として、多くの期待を集めました。ファンはアルバムのヒット曲だけでなく、映画との連携による楽曲も楽しんで受け入れました。
- 長期的な評価: 年月が経つにつれて、『A Kind of Magic』はクイーンのディスコグラフィーの中でも愛されるアルバムの一つとして地位を確立しました。ファンはこのアルバムを新鮮な魅力があるとして高く評価しています。
アルバム・タイトル
このアルバムタイトルは、アルバムの音楽的な内容だけでなく、その時期のクイーンの状況と映画『ハイランダー』への楽曲提供という背景にも深く関連しています。
洋題:『A Kind of Magic』
- 意味: "A Kind of Magic"(一種の魔法)というフレーズは、アルバムが持つ魅力や特別な感覚を表現しています。このタイトルは、リードトラック「A Kind of Magic」から取られており、人生や愛、戦いなど、さまざまなテーマに対してポジティブなエネルギーと変容の力を魔法に例えていると考えられています。
- 背景: また、このアルバムは映画『ハイランダー』のいくつかのキーシーンのために書かれた楽曲を含んでおり、映画のファンタジックでエピックな物語とクイーンの音楽が見事に融合しています。
クイーン 12枚目のアルバム「A Kind of Magic(カインド・オブ・マジック)」解説のまとめ
『A Kind of Magic - カインド・オブ・マジック』は、1986年にリリースされたクイーンの12枚目のスタジオアルバムであり、バンドが1980年代の音楽シーンに残した色彩豊かな作品の一つです。
このアルバムは、映画『ハイランダー』のために制作された楽曲を中心に構成されており、それがクイーンの音楽的多様性と映画音楽としての役割を融合させたユニークな作品を生み出しています。
エピックなロックアンセムから、心を打つバラード、R&Bの影響を受けた楽曲まで、クイーンの多岐にわたる音楽性が凝縮されています。
特に、「One Vision」や「A Kind of Magic」は、バンドの代表的なヒット曲となり、そのキャッチーなメロディと力強いメッセージで、80年代のポップカルチャーにおいて重要な位置を占めています。
また、「Who Wants to Live Forever」や「One Year of Love」のような楽曲は、フレディ・マーキュリーの感情豊かなボーカルパフォーマンスが光り、リスナーの人生に寄り添って心に深く刻まれる作品となっています。
『A Kind of Magic』は、クイーンが音楽のジャンルや表現の境界を越えて挑戦を続けた証であり、その実験精神はこのアルバムを通じて明確に示されています。
映画『ハイランダー』のサウンドトラックとして制作された楽曲は、映画のダイナミックな物語と見事に融合し、バンドの音楽が映画の世界を豊かに彩る様子を見せています。
これらの楽曲は、クイーンの音楽が持つドラマティックな力と、ストーリーを語る能力を改めて証明しています。
アルバムのチャート成績や、後のライブパフォーマンスでの受け入れ方からも、『A Kind of Magic』はクイーンのキャリアの中でも特別な位置を占める作品であることがわかります。バンドはこのアルバムを通じて、1980年代の音楽シーンにおいても革新的な存在であること、そして彼らの音楽が時代を超えて多くの人々に影響を与え続けることを証明しました。
映画音楽としての役割を超え、単独のアルバムとしてもその完全性を保ち続けるこの作品は、クイーンが音楽界に残した魔法のような遺産の一つとして、今後も多くの音楽ファンに愛され続けるでしょう。
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