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ロック

クイーン「ホット・スペース」:10枚目のアルバムを解説。収録曲とレビュー

「Hot Space QUEEN アルバム解説」と記載したアイキャッチ

1982年にリリースされた、QUEENの10枚目となるオリジナルアルバム『Hot Space(ホット・スペース)』は、そのキャリアの中でも新たな転換点を模索したアルバムです。

特にファンク、ディスコ、R&Bといったブラックミュージック方面のジャンルとの融合へチャレンジし、バンドは音楽的に前作以上に変化を追求しました。
その結果、「問題作」「賛否両論」などの声や、「駄作」といった評価を生むことにも繋がり、ファンにとっても好き嫌いが分かれるアルバム。

この記事では、そんな『Hot Space - ホット・スペース』の魅力を深掘りし、その時代を超えた影響力に迫ります。

QUEEN 10枚目のアルバム「Hot Space(ホット・スペース)」概要

販売年月日: 1982年5月21日
収録曲数: 11曲
売上枚数: 約350万枚以上(全世界)
アルバムの特色: クイーンがファンク、ディスコ、R&Bへと音楽的な探求を進めた作品。バンドの伝統的なロックスタイルからの一時的な転換を示す。
参加メンバー: Freddie Mercury, Brian May, Roger Taylor, John Deacon
プロデューサー: Queen, Reinhold Mack
エンジニア: Mack, David Richards
収録スタジオ: Mountain Studios (スイス), Musicland Studios (ドイツ)
レーベル: EMI Records、Elektra Records
特別エディション: 2011年にリマスター版がリリースされ、ボーナストラックと未発表曲が追加された。

収録曲:解説とレビュー

1. Staying Power (ステイング・パワー)

作詞作曲: Freddie Mercury

『Hot Space』のオープニングトラックである「Staying Power」は、ファンクとディスコの要素を取り入れた、エネルギッシュでダンサブルな楽曲です。

Freddie Mercuryのダイナミックなボーカルと、「パキッ」としたブラスセクションとクラップの活用が新鮮なサウンドを生み出しています。
この曲は、アルバム全体のブラックミュージックとの融合を示唆しており、リスナーを即座にその世界観に引き込みます。

2. Dancer (ダンサー)

  • 作詞作曲: Brian May

「Dancer」は、Brian Mayによって書かれた、エレクトリックギターとシンセベースが絡み合うダイナミックなトラックです。

1980年代初頭のディスコとロックの融合を試みた実験的な作品で、躍動感あふれるリズムとメロディが特徴です。

Mayのギターソロはこれまでとは一風違った、彼のスタジオミュージシャン的アプローチとも言える才能と音楽的な幅広さを見せ付けています。

3. Back Chat (バック・チャット)

作詞作曲: John Deacon

John Deaconが手掛けた「Back Chat」は、ファンクに強く影響されたトラックで、バンドの従来のスタイルからの脱却を象徴しています。リズミカルなベースラインとシャープなギターリフが特徴で、歌詞では自己主張と反抗や対立のテーマが探求されています。

曲中繰り返されるリフレインは、どこかチャイニーズな雰囲気も持ち合わせています。

4. Body Language (ボディ・ランゲージ)

  • 作詞作曲: Freddie Mercury

「Body Language」は、Freddie Mercuryのセクシャルなボーカルパフォーマンスと、ミニマリスティックなインストゥルメンタルが特徴の楽曲です。

その挑発的な歌詞と独特のサウンドデザインで、アルバム中でも特にディスコとR&Bの影響を色濃く反映しています。
リズムとベースラインが楽曲の性的な雰囲気を高め、クイーンの音楽的な範囲の広さを示しています。

5. Action This Day (アクション・ディス・デイ)

  • 作詞作曲: Roger Taylor

Roger Taylorによる「Action This Day」は、エネルギッシュなサックスセクションと裏打ちビートを繰り返し打ち込んでくる、勢いのあるトラックです。

歌詞は、行動と変化を促すメッセージを伝えており、1980年代の世情も反映したポジティブな姿勢が伺えます。
リズミカルでファンキーなこの曲は、アルバムの中でも特に前向きなエネルギーを放っています。

6. Put Out The Fire (プット・アウト・ザ・ファイア)

  • 作詞作曲: Brian May

「Put Out The Fire」は、Brian Mayの社会的なメッセージを含んだ歌詞と、バンドの伝統的なロックスタイルが融合した楽曲です。

このトラックは、ギタードリブンのリフと力強いボーカルが特徴で、アルバムの中で一際スタジアムロック色の強い曲となっています。
武器の暴力とその影響についての深刻なテーマにも関わらず、音楽的にはエネルギッシュで前向きなエネルギーを持っています。

このアルバムの中で、最も「それまでのクイーンらしい曲」という位置付けでもあります。

7. Life Is Real (Song for Lennon) (ライフ・イズ・リアル(レノンに捧ぐ))

  • 作詞作曲: Freddie Mercury

「Life Is Real (Song for Lennon)」は、Freddie Mercuryがジョン・レノンへの敬意を表して作ったバラードです。

この曲は、Mercuryの深い感情と、レノンへの個人的な賛歌が込められています。
ピアノとボーカルのアレンジがシンプルながらも、包み込んでくる歌詞とメロディは強い感動を呼び起こします。

楽曲としても、もろにジョン・レノンの曲を意識した構成とアレンジとミックス処理で、ピアノの音色や各楽器の音色もレノン曲をガッツリ意識してあることが伺えます。

コードがクリシェしていく部分などは、一瞬「ジョン・レノンの曲か!?」と思えるほど。

8. Calling All Girls (コーリング・オール・ガールズ)

  • 作詞作曲: Roger Taylor

愛と団結をテーマにしています。
ほどよくキャッチーなコーラスが特徴で、英国バンドのロックルーツを思い起こさせる作品です。
アルバムの中で、ちょっと一息つける?リスナーにとっても肩の力を抜ける一曲。

9. Las Palabras De Amor (The Words of Love) (ラス・パラブラス・デ・アモール(愛の言葉))

  • 作詞作曲: Brian May

このアルバム中では伝統的なクイーンスタイルに分類されるバラードの一つです。

愛の普遍的なメッセージと、異文化間の理解と尊重をテーマにしています。
Mayの畳み掛けるようなギタープレイとMercuryの情感豊かなボーカルが、楽曲の温かみと深い感情を伝えます。

大地を踏みしめて歩いているようなベースラインも印象的です。

10. Cool Cat (クール・キャット)

  • 作詞作曲: Freddie Mercury and John Deacon

「Cool Cat」は、Freddie MercuryとJohn Deaconが共作したスムーズでリラックスしたメロウなトラックで、ソウルバラードとR&Bの要素を融合しています。

Mercuryの柔らかなファルセットボーカルと、Deaconの洗練されたベースラインが、この曲のクールで大人な雰囲気を作り出しています。
エレピの音色もギターのカッティングは、ジャンル的にはAOR要素の高いR&Bアプローチと言えます。

11. Under Pressure (アンダー・プレッシャー)

「Under Pressure」は、デヴィッド・ボウイとのコラボレーションによる伝説的なトラックで、社会的なプレッシャーと人間関係の複雑さをテーマにしています。

その強力なベースライン、印象的なハーモニー、そしてMercuryとBowieのダイナミックなデュエットで広く知られています。
音楽評論家とファンからは、クイーンのキャリアの中でも特に記憶に残る曲の一つとして高く評価されています。

クイーンサウンドとデビッド・ボウイ、この化学反応が聴けるなんて盆と正月が一緒に来たようです!

アルバムの特徴がわかる、レーダーチャート

QUEEN 10枚目のアルバム「Hot Space(ホット・スペース)」の特徴を示したレーダーチャート

アルバム・ジャケット

アルバムジャケットのデザイン

  • ビジュアル: ジャケットのデザインはJohn Barr / Norm Ung / Steve Miller が担当。『Hot Space』のアルバムカバーは、色とりどりのブロックが隙間なく並んだデザインで、中央上部には「QUEEN HOT SPACE」と書かれています。このカラーブロックは、熱を連想させるグラデーションが特徴で、アルバムタイトルの「Hot Space」を視覚的に表現しています。
  • 意図: アルバムのビジュアルデザインは、アルバムが持つ音楽的な熱量とエネルギーを象徴しています。また、この時期のクイーンが取り組んだ音楽的な実験、特にファンクやディスコ、R&Bへの傾倒を反映しているとも言えます。

アートワークの背景

  • 音楽的変化の象徴: 『Hot Space』は、クイーンが従来のロックから一歩踏み出し、よりダンス指向のサウンドを探求したアルバムです。この音楽的なシフトは、アルバムアートワークの斬新さともマッチしており、クイーンが新しい音楽的境地へと進出していることを示しています。
  • クリエイティブな挑戦: アルバムのアートワークは、クイーンが音楽だけでなく、ビジュアル面でもクリエイティブな挑戦を続けていることを反映しています。色彩豊かなデザインは、その時代のポップカルチャーの影響を受けつつ、バンド独自のアイデンティティを保っています。

チャート順位

英国 (UK)

  • チャート最高位: 4位
  • 英国では比較的高いチャート位置に到達しましたが、クイーンの以前のアルバムと比較すると、若干の落ち込みを見せました。

アメリカ (US)

  • チャート最高位: 22位
  • アメリカでは、先行アルバム『The Game』が記録した成功には及ばず、トップ20入りを逃しました。

日本

  • チャート最高位: 6位
  • 日本では良好なチャート成績を収め、クイーンの日本における人気の高さを再確認させました。

『Hot Space』のアルバムは、ダンス・ポップやファンクといった新しい音楽スタイルへの挑戦を含んでおり、それが一部のファンや批評家からは賛否両論を呼びました。

この音楽的な転換は、特にアメリカや英国でのチャート成績に影響を与えたと考えられます。しかし、日本を含む他の市場では依然として高い人気を維持しました。このアルバムは、クイーンのキャリアの中で特に議論を呼んだ作品の一つとして、今日でも多くの音楽ファンによって語り継がれています。

世間の評価(評論家・ファンの評価)

批評家からの評価

  • 賛否両論: 『Hot Space』は批評家から賛否両論の評価を受けました。一部の批評家は、クイーンが新しい音楽スタイルに挑戦したことを評価し、バンドの多様性と実験的な精神を称賛しました。特に、「Under Pressure」のような曲は高い評価を受けました。
  • 批判: 一方で、多くの批評家は、クイーンが従来のロックスタイルから離れたことに対して批判的でした。特に、アルバムのダンス・ポップ指向がバンドの根本的な音楽性から乖離していると見なされ、一部のファンから好まれた従来のロックサウンドが欠けているとの指摘がありました。

「駄作?」ファンからの評価

  • 分裂した反応: ファンからの反応も分裂しました。一部のファンは、クイーンが音楽的な境界を拡張しようとした試みを支持しましたが、多くの伝統的なクイーンファンは、バンドがロックのルーツから遠ざかったと感じ、アルバムに失望しました。その結果「駄作」という扱いも一部に見受けられるようです。
  • 長期的な見直し: 発売当初は賛否両論だったものの、時間が経つにつれて『Hot Space』は一部のファンや批評家から再評価されています。アルバムが示した音楽的冒険は、後の世代のミュージシャンに影響を与え、クイーンの音楽的な幅の広さを示すものとして評価されるようになりました。

総合的な視点

『Hot Space』は、クイーンのディスコグラフィーの中で最も議論を呼んだ作品の一つであり続けています。

このアルバムは、バンドが新しい音楽領域に挑戦したことを示す重要なマーカーであり、その実験的な精神は後年の音楽シーンにおいても評価されています。
一部のファンと批評家からは否定的な意見もありますが、『Hot Space』はクイーンの音楽的な多様性と革新性を象徴する作品として、その地位を確立しています。

アルバム・タイトル

洋題:『Hot Space』

  • 意味: "Hot Space"というタイトルは、アルバムが探求している音楽スタイルの熱い空間や、エネルギッシュな音楽の雰囲気を象徴しています。また、この時期のクイーンが取り組んでいた音楽的な実験や新しい領域への挑戦を暗示しているとも解釈できます。
  • 背景: アルバムタイトルは、バンドがその時点で音楽業界のホットなトレンドに積極的に挑戦し、既存のロックの枠組みを超えた独自の音楽空間を創造しようとしたことを反映しているようです。

クイーン 10枚目のアルバム「Hot Space(ホット・スペース)」解説のまとめ

『Hot Space』は、クイーンが1982年にリリースした10枚目のスタジオアルバムで、バンド史上最も議論を呼んだ作品の一つです。このアルバムでクイーンは、彼らの伝統的なロックのルーツから一時的に離れ、ファンク、ディスコ、R&Bといったジャンルへ大胆に足を踏み入れました。この音楽的転換は、ファンや評論家から賛否両論を引き起こしましたが、時が経つにつれ『Hot Space』はクイーンの音楽的多様性と実験精神を示す重要な作品として再評価されています。

アルバムは「Under Pressure」といった普遍的なヒット曲を含む一方で、「Staying Power」や「Back Chat」、「Dancer」といったファンクとディスコに影響された楽曲で、新しい領域を開拓しました。これらの楽曲では、ブラスセクションの導入やシンセベース・シンセサイザーの使用が特徴的で、クイーンがこれまでにないサウンドを追求しています。

しかし、『Hot Space』はただ実験的なアルバムであるだけではなく、その中には「Las Palabras De Amor」や「Life Is Real (Song for Lennon)」のような、バンドの感情的深みと音楽的センシビリティを感じさせる楽曲も含まれています。これらのバラードは、アルバムに豊かなテクスチャーとバリエーションを加え、クイーンのソングライティングの幅広さを示しています。

『Hot Space』に対する評価は、そのリリース以来変遷してきました。

初期の批判にも関わらず、このアルバムはクイーンが単なるロックバンドではなく、幅広い音楽的探求を行うアーティストであることを世界に示した作品です。ファンク、ディスコ、R&Bの要素を取り入れた楽曲は、ライブパフォーマンスで新たな息吹を与え、多くのファンに愛されるクイーンのクラシック的な扱いとなりました。

色んなジャンルとの融合にチャレンジした事実こそが、後世のアーティストに大きな影響を与え、ひいては音楽業界全体の可能性をどれほど広げたかは計り知れません。

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